中部大学教育研究16
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間違うことがありながらも助詞を使い上手に日本語を話していた。写真2同行したS病院。日本人向けのクリニックも併設されている7インドネシアで日本人の健康を支える医療アテンドEPAで来日したインドネシア人看護師たちは、たとえ、インドネシアの看護師資格を持っていても日本の資格がないことを理由に、日本在留中、資格取得までの間は看護助手(ケアギバー)の仕事をしている。主な仕事内容は、入浴介助、オムツ交換などであった。これらは、日本で不足している介護職の仕事の範疇でもある。彼らは、看護師候補者という名目でありながら、実情は介護人材不足を補う役割として就労している場合も多くある。言わば日本の医療の足元を支えてくれている人達でもあるのだ。その彼らは、インドネシアに帰り、日本で得た知識やスキルを元に、インドネシアで日本人の健康を支える仕事についている。筆者がインドネシアに滞在している間に、ある日本人が、体調を崩しAさんにアテンドを求め電話をかけてきた。その後、その日本人は入院することになった。異国の地で入院を余儀なくされることの不安は筆者にも容易に推測できた。病気だけでも不安であるのに、言語の違い、文化の違いを体験し、病気以外にも大きなストレスを抱えることになる。そんな中で、日本語がわかり、医療についてもフォローをしてくれる医療アテンドの存在はとても心強く、そして価値があると思う。筆者がAさんの病院の医療アテンドに同行した日は、Aさんは朝から夜まで、ほとんど休みなく日本人の患者への対応を行っていた。外来受診から、胃カメラ、大腸カメラなどの検査に付き添い、医師の説明を患者に伝えたり、検査後の処方についての説明書を作成し、飲み方を説明するなど健康面でのサポートをしていた。そんなAさんの現在の夢は、日本で働くことである。准看護師資格を持っているAさんは日本で働けるのではないかと思われがちであるが、看護師資格とは異なり、准看護師の場合は、出入国管理法で「准看護師資格取得から4年の間研修として在留ができる」という法令がある。このため、2013年准看護師資格を取得したAさんは、あと数カ月でその効力がなくなる。資格取得後、結婚、出産をし、いざ日本で仕事をしようと思った時には、時すでに遅かったのであった。Aさんは気持ちを切り替えて、看護師国家試験の再受験のための勉強を再開しはじめている。写真3薬の飲み方を日本語に直すAさん8日本で働くインドネシア人看護師、中部大学に看護師国家試験に合格し、日本で1年半ほど就労した後にインドネシアに帰国していたBさんが、今年の6月から再度日本の病院で看護師として就労を始めた。この機会に筆者が授業研究をしている「看護学概論」の一コマにある「国際看護」の中でBさんをゲストとして招き、45分程インタビュー形式で話をしてもらった。受講者は保健看護学科の1年生であったが、インドネシア人看護師から、日本とインドネシアの文化、宗教などの生活の違いや就労での体験、そして日本人と一緒に働く上で気をつけていること、日本人に配慮してほしいことなどを語ってもらった。学生たちの授業後のコメントペーパーには、外国人との協働について、「積極的な関係作り」や「相手を尊重するかかわり」が大切であるというキーワードが多く書かれていた。この講義をきっかけに看護の基本だけでなく、多くの気づきもあり、授業のねらい以上のものが得られたと感じた。短時間での講義の中でこのような気づきができたことから、実際に日本で働く外国人看護師や海外で働く看護師を見たら、もっと多くのことを学ぶことができるのではないかと期待が高まった。開発途上国のパワーと人とのつながりを大切―107―ふたつの国で日本人を支えるインドネシア人たち

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