中部大学教育研究15
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の茶室に興味を持たれたので、「茶室はある意味、分娩室と似ている」と筆者の思いを述べた。茶道において主人が客人をもてなす際の気配りと思いやりは、日本の看護や助産のありようにも通じていると感じるからだ。いったん産婦が陣痛室や分娩室に入ったら、誰であろうと関係なく、助産師は「一期一会」の精神でできる限りのケアを行うからである。そして、分娩の主役はあくまでも産婦であるため、助産師は出すぎてはいけない。「不言実行」、まさしく本学の建学精神そのものであると思う。そのこともお伝えできたので、本学に来ていただいてよかったと思った。5おわりに案内役兼通訳は不十分であったと思うが、訪問先の方々のご厚意により、アリソンと助産学生らに多様な助産施設を知ってもらうことができたと思う。また、建物の構造や備品など、ある程度のハード面はもちろん重要であるが、女性と家族中心の助産ケアを提供しようとする助産師の信念や創意工夫が何よりも大切であること、日本の身近なところに他国の専門家にも誇るべき施設やケアがあることを筆者自身が再認識でき、その素晴らしさを再発見できた。愛知を発った一行は、心配していた台風の難を逃れて無事に新潟に移動し、そこでの研究視察を終えて、横浜でのICMAPRに参加された。幸運にも、筆者らは1週間後に横浜で再会することができた。謝辞稿を終えるにあたり、今回の研究視察にご協力くださったゆりかご助産院の赤塚庸子院長、春日井市民病院の鈴江智恵看護部長、上村睦美副看護部長、2階東病棟の山田みちよ師長に心から感謝申し上げます。注1)ただし、「助産師」単独では取得した州以外では免許が使えないこともある。2)日本で助産師が分娩を扱う開業をする場合、嘱託医と契約をして、緊急時の搬送や医療処置について協力を得ておくことが条件となっている。3)病院内において正常分娩のみを助産師主導で扱う新しいシステム。正常に経過すれば分娩に医師は立ち会わないが、緊急事態には医師を呼び、すぐに対処できる。―79―日本の助産ケアの良さを再発見(准教授生命健康科学部保健看護学科)

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