中部大学教育研究15
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C/Dクラスでは、「Glexa」を利用する時間を充分確保できるため、一斉指導から個別学習へ、個別学習からペアへ、ペア学習から個別学習や一斉指導へと多様な授業展開をしている。「Glexa」を介して双方向授業が叶えられているばかりか、授業時間内の反転学習も日常的である。教材作成や情報共有、成績管理といった機能以上に大きな「Glexa」のメリットは、個別学習の多様化、深層化である。学生が課題を行う回数は、1回から無制限に設定することができる。特に、課題への挑戦回数を無制限に設定すると大きな変化がC/Dクラスに発生した。ある日、1回限定の課題を課した際、学生から「課題に1回しか取り組めないと、自分が試されているだけで、学習に至らない。」という声があがり「もう一回チャレンジさせてほしい。」という要望が授業中に出た。無制限チャレンジにすることで、学生は自分の学習内容を見直し、弱点を補強するために何度も挑戦を繰り返していくようになっていた。この変化により、多くの学生がこれまでの英語授業で体験してきた「わからなくてつまらない」時間が削減でき、授業時間を「自分の学習のための時間」に転換することにつながった。「授業で少しずつ英語が身についている実感があり、180分間があっという間に過ぎる。」という感想がC/Dクラスから寄せられた。3.4e-Learning教材を用いた素地育成限られた英語授業時間内で、最も削減されてしまう傾向にあるのは、個々の発音練習や、実際に英語を声に出してトレーニングを行う時間ではないだろうか。本プログラムでは、語学センターに2013年度から導入されている英語e-Learning教材「ATRCALLBRIX」(株式会社内田洋行)を積極的に活用している。ER学科のプログラムでは、学期中に音読録音のテストも課している。そこには日常的な英会話に留まらず、専門領域でのプレゼンテーションを英語で行うといった場面をめざして、まず自分の口から英語を出すことへの抵抗感を軽減し続けるという意図がある。1年次の授業内では特に、リスニングトレーニングと発音、プロソディ(韻律)を重視した発話トレーニングを重視しているが、その土台となるトレーニングを「ATRCALLBRIX」を用いて自主的に取り組ませている。第1期生の中には、6ヶ月間で「ATRCALLBRIX」のコースのうち4コースを修了した学生がいる。「ATRCALLBRIX」の基礎コースには、例文一文単位のレッスンしかないのにもかかわらず、この学生が最初に英語力の変化を表したのは、長文リスニングの大意把握、リーディング時であった。1年次、「ATRCALLBRIX」を最低1コースでも90%以上学習した第1期生は、74人、全体の9割以上となった。彼らは2年次にも「ATRCALLBRIX」での学習を続けている。3.5SIRoom(語学専用自習室)の活用本学語学センターにあるSIRoom(語学専用自習室)には、CALL教室の学生ブースと同様の機能があるスピーキングブース、インターネット環境が整備された学習スペースがある。また、語学教員により自主学習に適した語学教材が厳選され、室内で利用できるように管理されている。「Glexa」や「ATRCALLBRIX」については、学生は学内外からアクセスすることができるようになっているため、自分が学習しやすい学習環境を選んで学習を進めることができる。SIRoomで学習するメリットは、他の自主学習者と与え合う見えない影響だといえよう。「語学を身につけよう」とする同じ目標に向かって、学科や学年の境を越えて学習者同士が刺激を与え合っていることが、SIRoomの特長である。ER学科学生も例外ではなく、ER学科第1期生のSIRoom利用登録者数はおよそ6割に当たる47人であり、2014年度の利用件数は364件とSIRoomの全利用件数3,755件の中で約1割を占めた。4初年度の成果と考察開設初年度、授業は3クラス(Aクラス24名、Bクラス28名、C/Dクラス28名計80名)でスタートした。特にリスニングと発音の強化、アウトプットを想定したインプット、インテイクに重点を置き、英語を聴いて理解しよう、発音してみようとする意欲の向上に焦点が当てられた。英語学習において教員が期待することは、インプットすればアウトプットにつながるであろうということかもしれない。確かによいインプットはよいアウトプットに結びつくはずだが、英語弱者の場合、教員が強制するインプットなど簡単に拒絶されることも少なくない。工学者として専門領域で英語をコミュニケーションや情報収集の共通言語として使っていこうとする場合、ゴールは自分のことばの一部として英語を獲得し保持し使うことである。ここでいうアウトプットとは試験での得点獲得ではなく、実社会での言語運用である。それを踏まえると、言語を運用できる形にインプットし、アウトプットへと結びつけるためには、アウトプットをめざしたプラクティスのつみ重ねと、それを通したインテイクの蓄積が必要である。―62―小栗成子・高丸尚教・関山健治・加藤鉄生

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