中部大学教育研究15
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図3、4は、A/B、C/Dクラスがどのようなコンセプトで実践されているかを示している。45分か180分かという違いはあるが、いずれのクラスでも①CALL教室を活用し、②一斉授業時間を最小限にし、③アクティブラーニングを軸として授業が展開され、④SIRoom(語学専用自習室)での利用を促し、⑤e-Learning教材での基礎訓練を行わせていることが共通している。しかし、A/BクラスとC/Dクラスが異なる点は、単に90分か180分かという授業時間の違いだけではない。A/Bクラスの授業では、教室の形態にかかわらず対面授業においてのみ得られる学習体験を重視し、ペア学習を最大限取り入れている。ここには、学生たちが高校までに経験してきた方法とは異なる学習形態を選ぶことで気持ちをリセットさせたいという意図がある。ここでは、主体的に学ぶことへの可能性を感じさせようとしていると同時に、人とのコミュニケーションを英語学習の場でも体験し、協調的な関係を築いていこうとする姿勢を育成していこうとしている。A/BクラスがCALL教室と演習室とで45分ずつ行っている2タイプの授業を、C/DクラスではCALL教室で行っている。第一期生からは「自分が納得しかけたところで終わる90分よりも、この授業はさらに90分あるので自分の中に学習内容が入りやすく、毎授業の終了時には達成感がある。」との感想が寄せられた。CALL教室での授業といえば、パソコンに学生が静かに向い、黙々と個々のペースで個別学習を進めていくような授業がイメージされがちだが、ここで実践されている授業は「動」と「静」から成っている。CALL機能を駆使したペア学習やそのモニタリング(教師によるヘッドセットを介したアクティビティ観察)が行われることもあれば、ヘッドセットを外し、生の声を使い、ノンバーバルコミュニケーションも指導に入れたペア学習を行う場面もある。授業終了までの180分間には、ペア学習や一斉指導をもとにし、アクティブ性を重視したタスクと、インナーアクティブ性、すなわち内面的な活性化を重視したタスクとが織り込まれており、学生の英語が多く響く180分間となっている。授業後「顎が疲れました」「喉、使いました」というコメントを残しながら教室を後にする学生もいる。3学習を促進する要素3.1学習環境とツールER学科の英語プログラムは、学習空間とCALL機能、Webベースの教材作成ツールでもあり学習の場でもある「Glexa(グレクサ)」(株式会社Version2)という学習環境が支えている。週1回しかない授業時間のみで英語力を定着させることは、たとえ入門レベルであろうと容易ではない。ICTの導入は、教員にとっては授業が効率的になることはあっても、必ずしも英語力の定着が約束されているわけではない。授業時間内に学生の内側から英語学習への意欲や主体性を少しでも引き出し自信へと向かわせようとする場合、教員は学習環境やツールを駆使し、学びを一歩でも前進させるための工夫を常に探求していなくてはならない。3.2CALL機能の積極的活用CALL教室の外観はパソコン教室に似ているが、CALL教室は単なるパソコンが並ぶ部屋ではない。学生は、教員(教卓)とサーバーを介して結びつけられた各ブース(端末)を使用して学習する。そこでは音声トレーニング、特に発話練習を充実させることができる。教材(音声を含む)の配布や提出物(提出音声)の回収ができるばかりでなく、ペアやグループを構成してヘッドセットとマイクを介して「ことば」の練習を行うことができる。CALL教室はスムースに語学訓練ができるよう構築されており、教員は教卓にいながら、時に動き回りながら、全学生の学習の様子を目と耳で確認することができる。それは教室の中に個室があるような環境であり、集団での授業であっても教員が学生といつでも1対1になれる点が、CALL教室を利用する最大のメリットといえよう。3.3Glexaの積極的活用教材作成webプラットフォーム「Glexa」は、語学センターに2013年度に導入されたe-Learning環境である。これには既成の教材は含まれてはいない。教員がwebプラットフォームで教材を作成、計画的に学生(受講者)に公開して学習をさせていくものである。既成品のe-Learning教材と異なるのは、学習者の実状に適したタスクを教員が用意し、意欲や動機の変化、習熟度に即して教員がタイミングよくタスクを実践させることができる点であろう。この環境では、リスニングからライティング、スピーキング、文法練習、語彙練習に至るまで、従来プリントやテキストで行う類の学習素材(選択問題、穴埋め問題、記述問題)をあらかじめ教員がweb上で作成し、授業時のタスクや自主学習用課題として用意しておくことができる。自動採点型のタスクであれば、学習(解答)から成果確認(採点)までのプロセスにかかる時間を短縮することができ、そこで節約された時間を一斉指導やペア学習、個別タスクに配分することができる。また、作成した課題は複数の教員間で閲覧したり共有することができるため、教員同士が恊働したり支援し合ったりすることも容易である。―61―ロボット理工学科英語強化カリキュラム

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