中部大学教育研究15
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に苦手意識を持つ学生の増加傾向をふまえ、傾聴実習を弾力的に組み入れ、学科メンバーと言葉を交わす機会を増やしたい。また、「先輩からのメッセージを聞いて何とかなりそうな気がしてきた」「感じのよい先輩がいることがわかって嬉しかった」というコメントから、「上級生から託された体験メッセージ」が新入生の不安軽減に役立つことが推察された。傾聴実習体験に併せて心理的課題への対応例を示しながら、学生時代に自分と真摯に向き合うことの重要性を伝える必要性を感じている。自己紹介体験後の感想(聞き役の人に笑顔で聞いてもらえて話しやすかった、相手が聞き上手だったのでもっと話したいと思った、といった内容)をペアとなった学生間で共有することも学生達の自己効力感向上の工夫になろう。6.2課外活動当該新入生支援プログラムの質的向上はサポートに当たる上級生育成に因るところが大きかった。新入生支援活動を通して上級生の成長も促進される。新入生支援の充実は大学全体の教育力の向上に貢献するものと考えられる。学生が「主体性を持って多様な人々と協力して問題を発見し解を見出していく能動的学修」に至るには、属する小集団メンバー間の対人関係の構築が肝要である。多様な学生と集団作業を進めていく中で問題が発生した場合には教職員による適切な指導が必要であり、教職員の学生対応能力が求められる。どのような枠組みや学生対応がより効果的なのかの検証が必要である。また、新入生支援のグループ活動を行うことで、上級生のニーズが明らかになった。「ひとり暮らし入門」企画の構想段階では参加希望者は新入生に限られるものと想定していたが、ゼミの開始を機に大学周辺にアパートを借りた学生、インターンシップ参加の際に遠隔地のワンルームマンションでひとり暮らしをする予定の学生、大学院進学後のひとり暮らしや就職後の転勤に備えて話を聞いておきたいという学生からの参加希望を得た。新入生支援のために始めた企画であったが、ひとり暮らしという新生活運営情報を求めている学生は新入生だけでなかった。就職内定をもって大学進学の目標達成とする気運を前に、社会人適応を支援するための「卒業期教育」が手薄であることは否めない。キャリアセンターをはじめとする学内関係部署と連携した切れ目のない支援プログラムの必要性を改めて感じた。謝辞「自分の体験を後輩に役立ててほしい」とメッセージを託してくれた学生諸君と「ひとり暮らし入門」の上級生サポーター達に深謝します。参考文献中部大学2014大学教育改革のまとめ-大学教育改革推進委員会の活動総括-.中部大学学生相談室2013アスペルガー症候群の学生を理解し支援するために(DVD).中部大学.中部大学全学共通教育部初年次教育科編2015大学で学ぶスタートアップセミナー参考テキスト2015.KNS出版.中央教育審議会答申2014新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革についてhttp://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/_icsFiles/afieldfile/2015/01/14/1354191.pdf(2015年9月20日取得)伊藤守弘・西垣景太・佐藤枝里・栗濱忠司・山田公夫2011フレッシュマンキャンプの効果-情動知能の観点から-.中部大学教育研究,11,75-79.桐山雅子・小塩真司・願興寺礼子・佐藤枝里2012中部大学新入生の意識変化-25年間の学生相談室アンケート結果より-.中部大学教育研究,12,91-98.小塩真司・吉住隆弘・佐藤枝里・願興寺礼子・桐山雅子2009新入生は大学教員にどのようなかかわりを求めているのか-学生相談室アンケートの分析から-.中部大学教育研究,9,23-28.佐藤枝里2015新入生を対象とした多層的支援体制の構築-中部大学における学生相談室の取り組み-.初年次教育学会第8回大会発表要旨集,110-111.(講師学生教育推進機構学生相談室)―48―佐藤枝里

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