中部大学教育研究15
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てみたい」「得意の豚丼の作り方を伝えたい」「アルバイト先で鍛えたフライパンの技を披露したい」「牛乳パックを使って名古屋名物『ういろう』を作ってみたい」など多様な企画が行われた。包丁で指に切り傷を負ったり高温の鍋に触れたり調理実習は時間との戦いもあり緊迫感が伴う場面もあったが、上級生サポーターや管理栄養学専攻の上級生達の迅速丁寧な包丁さばきと親切な対応、ひとり暮らしの知り合いができたこと、楽しく話をしながら試食したことへの満足感がアンケートに記された。5.3上級生サポーターの育成過程「ひとり暮らし入門」は上級生がサポーターを務めるサポート・グループである。「部活やサークル、アルバイトほど時間をかけることはできないが期間限定の活動として何かやってみたい」という意思のある学生が集まっている。1年次に参加した経験のある学生から「今度はサポートする立場になりたい」という自発的な応募を得たり、前年の参加メンバーに声を掛けたりと募集をし、4名から8名の学生の運営をカウンセラーが後方支援する形で進めてきた。第1回の開催は2011年4月で、初代上級生サポーターを務めたのは前年度秋学期の「自分探しグループ」に参加した、学部、性別、通学形態も異なる多様な学生達だった。自分探しグループは通常4回プログラムであるが、「終了後も週1回グループを継続したいので学生相談室のミーティングルームを貸してほしい」「ファシリテータを務める学生の補佐役としてカウンセラーに同席してほしい」との依頼を受けた。心理学スキルを用いた自己理解・他者理解の会が数回続いた後、「所属学科での勉強の紹介」「音楽サークル部員による楽器演奏会」「部屋の片づけ講座」に進展し、その後イラスト好きなメンバーが学生相談室広報案内を手伝うなど、相談室を居場所とした活動が始まった。ミーティングルームで彼らの様子を見ていた下級生が「自分も『自分探しグループ』に参加して仲間を作りたい」と話したところから、「ひとり暮らし入門」の企画ではカウンセラーが前面に出るより上級生がリーダーシップをとる方が新入生にも上級生にも教育的なのではないかと考えるに至った。趣旨を伝えたところ快諾され、参加者の新入生から「優しい先輩がいて安心した」「何とかなる気がした」「不安が減った」という感想が得られ、上級生サポーターは新入生に対してのよいロールモデルとなることがわかった。上級生サポーターへの応募動機には「かつて自分がお世話になったので今度は役に立ちたい」という課題遂行型と「他学科の知り合いがほしい」という親睦志向型があり、まさに「多様な学生が出会う場」であった。第1回の開催結果から、上級生サポーター同士が友好的で余裕があり、心配事を相談しやすい雰囲気作りが肝要であることが推察されたので、その後は上級生サポーターの育成に注力することになった。2015年度は表4の内容で事前事後研修を行った。メンバー間の信頼関係構築を一義とした傾聴実習や対人理解が、「主体性を持って多様な人々と協力して問題を発見し解を見出していく能動的学修ができる学生(中教審答申,2014)」の育成に役立つのではないかと考えている。表4上級生サポーター研修と準備過程自己理解と他者理解・イメージを用いた自己紹介・中部大学で学んでよかったことの言語化・参加動機、新入生に伝えたいことの明確化・(差支えのないところで)学生生活・ひとり暮らしで大変だったことと、それをどのように乗り越えたかの共有(もしくはどのように取組んでいるか)傾聴実習と新入生対応・「よりよく聴く」体験実習・「聞いてくれない相手に話す」体験実習広報活動・イラストの得意な学生によるポスター制作・放送研究会のテレビ生番組でのPR出演・留学生歓迎会での案内情報交換会準備・内容検討、配布資料作成、会場設営調理実習準備・献立検討・現代教育学部事務室提出用資料の作成準備・食材買出し・メニューの作成配布・ホームページ掲載原稿準備事後研修・振り返り・上級生サポーターメンバー間でのお互いの長所のフィードバック6事例を通して得られた今後の課題正課授業の「スタートアップセミナー(社会生活の基礎)」と課外活動の心理教育的グループ「ひとり暮らし入門」の実践事例を振り返った。6.1正課授業授業のコメントシートには、自己紹介体験への不安や緊張とともに「困っているのは自分だけではないと知った安心感」が記されていた。コミュニケーション―47―学生相談室による新入生支援

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