中部大学教育研究15
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かかる。学年が上がって大学生活や地域にも馴染み、学内での人間関係が進むと、「遠距離通学している友人達の都合のよい宿や溜まり場になってしまう」「近いから時間的に余裕があるでしょうと部活やゼミの雑事を押し付けられてしまう」「相談があるからと話を聞いたら悪質な勧誘だった」といった対人関係の絡んだ新たな悩みが起きてくることもあるようだ。規則正しい生活は、自宅生、ひとり暮らし学生に等しく求められるものであるが、同居家族がいないことは自立の機会である一方でリスクでもある。学生時代のひとり暮らしは、家庭の事情もあり誰もが体験できるものではない。貴重な体験と位置づけ、蓄積されたそれぞれの情報を集約し、アドバイスを必要としている新入生に伝えることでひとり暮らし学生の自己評価の向上に繋げられたらという思いから企画して6年、5回の開催を重ねてきた。5.2実施内容学生相談室が主催する「心理教育的グループ」は正課授業同様、健康増進を目的とする予防活動に相当するものである。現在学生相談室が毎年定期的に実施している「心理教育的グループ」には、「自分探しグループ」と「ひとり暮らし入門」の2種類のプログラムがある。春学期のスタートアップセミナーの授業や放送研究会による学内テレビ放送や掲示板、トラネットを通じて参加者募集を行っている。ひとり暮らし入門では「情報交換会」と「調理実習」を実施している。「情報交換会」では、事前に新入生の参加希望者から得られた「心配事」や「必要としている情報」をもとに簡単なレクチャーを行い、その後、相談や質問に答える形式をとってきた。下記の表3は情報交換会において取り上げられてきた主な内容である。「上級生サポーター」として会の運営を担当する学生のメンバー構成によって扱う内容や進行に個性が表れた。例えば、現代教育学部の学生が運営を担当した年度では、付箋と模造紙、マジックが用意され、上級生サポーターが各グループに入ってディスカッションした後、全体発表という展開となった。アクティブ・ラーニングの諸技法が取り入れられ、学年を超えてその新鮮さや手際の良さを共有した。工学研究科で地図を扱う研究をしていた大学院生がメンバーに加わっていた年度では、病院やスーパーといった大学周辺の情報が簡潔なコメントやアドバイスと共に記入された地図が作成されて新入生に配られた。作成された地図はその後後輩サポーターによって改訂が加えられ、現在もホームページで閲覧可能な環境にある。心理学科の学生がメンバーに入っていた時には傾聴を大切にした雰囲気で進み、希望者を募って大学周辺のケーキ店までの買出しツアーが企画された。30学科を擁する総合大学ならではの専攻の多様性が反映される場となっていた。表3ひとり暮らし入門「情報交換会」で取り上げられてきた主な内容ひとり暮らし入門のプログラムのもう一つの柱は「調理実習」である(写真1)。企画当初は、2台の電子レンジを駆使した超簡単クッキングを学生相談室内で実施していた。徐々に参加希望者が増えて手狭になり、応用生物学部管理栄養専攻の甲田道子先生の協力が得られたこともあり3年目からは会場を現代教育学部の家庭科調理室に替え、ガスコンロや炊飯器を用いた本格的な調理へと移行した。写真1現代教育学部調理室での調理実習献立も年度毎の上級生サポーターの意向によってさまざまで、「流行のパンケーキを作ってみんなで食べ―46―佐藤枝里・ひとり暮らしと学業両立の難しさ・勉強の大切さ、単位取得の大変さ・家事の煩わしさ、失敗例、アドバイス・アルバイトの危険性と失敗談・先生と仲良くなるコツ・図書館の上手な使い方・大型書店情報・大学周辺お勧めケーキ店、飲食店情報・自転車で行ける休日公園情報・ホームシック対処法・友人の作り方、ホームパーティの実例紹介・お勧め簡単レシピ・カビの生えない掃除術・近隣スーパーのタイムセール情報・病院、歯科医院、美容院情報・隣室騒音対策、勧誘対応、ゴミ出し、家賃情報

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