中部大学教育研究15
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5.4内容項目内容項目は形式項目に比べ、評価点の平均点も低く、できている人数も少ないが、表7からは、概ね次のような傾向が見られる。・1年次からある程度できている:「③主張の明確さ」・改善の傾向が見られる:「①構成の明確さ」、「②段落構成」・変わらずできていない:「④論理的つながり」「⑤具体的記述」「⑥考察の深さ」「⑦無駄や重複がないか」つまり、論述文の冒頭で「賛成」あるいは「反対」という立場を表明することはひとまずできている。そして論述文の典型的な構成パターンとして高校までの国語教育でも提示されている「序論-本論-結論」という三部構成に則った展開をする方向には向かっている。しかし、「⑦内容に無駄な部分や重複がないか」のできている人数は横ばいであるので、内容が整理された形で展開することはできていない。そのことは、「④論理的つながり」「⑤具体的記述」「⑥考察の深さ」においても、減点されていない人数はわずかに増えてはいるものの、4年次でもできているのは20%強しかいないことからも裏付けられる。「④論理的つながり」「⑤具体的記述」は2点、「⑥考察の深さ」は3点の配点項目であるので、減点のされ方を詳しく見てみると、図7に示したように「ウ⑤具体的記述」は、3、4年の方が0点が少なく、また2点が増えていることから、改善の傾向が見られると言ってよい。図8の「ウ④論理的つながり」、図9の「ウ⑥考察の深さ」では、それぞれ0点が減っていたり、できている人数が増えていたりとよい傾向もみられるが、そうでない面もあるので単純によくなっているとは言えない。「気づき」の内容を分析した山本・中林・本間(2014)では、内容項目の理解は形式項目よりも全般的に難しいとした上で、内容項目の中では、具体的で局所的なものである「⑤具体的記述」は問題点の理解がしやすい項目であることを指摘している。一方、「④論理的つながり」「⑥考察の深さ」については、論述文全体にかかわる問題であり、添削コメントで問題点を指摘されてもなかなか理解できている様子がないことを指摘している。これは、ここで述べた評価点の推移の様子とも一致していると言えるだろう。以上、内容項目のうち、構成に関わる部分は改善の傾向が見られるが十分なものではなく、内容の整理にまでは至っていないこと、また④~⑥のような論理的思考力が問われる項目は、具体的な内容である⑤にわずかに改善の傾向が見られるものの、全体としては伸び悩んでいることを示した。4年生であっても十分に論じられていないので、当然、加点項目である「⑧最後に内容が的確にまとめられているか」で加点された学生はほとんどいない。やはり、論理的思考力をつけるには時間がかかり、通常の授業の中だけで自然に力をつけるのは難しいと言えるだろう。6おわりに本稿では、日本語日本文化学科の取り組みから、日本語力の伸びにはどのような傾向が見られるかを述べた。IRT診断テストと論述文課題を実施してきた結果、全体として学年が進むにしたがって、語彙力および書く力に改善が見られる。しかし、書く力に関しては、基本的な部分は身につくが、特に内容面において論理的で説得力のある文章が書けるようになるには至っていないことも指摘した。物事を論理的に述べるスキル―40―山本裕子図7「ウ④論理的つながり」の評価点の推移図8「ウ⑤具体的記述」の評価点の推移1852181311860%20%40%60%80%100%13401214411513141460%20%40%60%80%100%134012図9「ウ⑥考察の深さ」の評価点の推移15728149114110%20%40%60%80%100%1340123

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