中部大学教育研究15
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較するとかなり平均点に違いがあり、1年生から3年生の2年間で語彙力がぐっとついていることがわかる。つまり、大学生活でこれまでと違った語彙に触れる機会が増えたと考えられる。3-4年生間では大きな差はないが、どの学年の平均点も「高3レベル以上」の得点であるので、伸びが少ないことは大きな問題とは言えないだろう。以上のように、日本語力診断テストの結果からは、大学生として問題のない語彙力の学生が大半を占めており、かつ学年進行に伴って伸びている傾向があるので、全体的には問題はないと言える。ただし、表2に示したように、少数ではあるが3年生、4年生になっても「中学生レベル」と判定される学生もいる。これらの学生が試験や進級で困難を抱えていないか等の追跡調査をおこない、必要に応じて手当てをする必要があるだろう。表24年生の中学生レベルの人数(人)4論述文の評価結果次に、論述文課題について述べる。すでに述べたように、論述文の添削評価は2012年度から始めたが、評価の結果や、添削評価を読んだ学生の様子をみて、評価基準を変更したり、添削コメントの入れ方に変更を加えたりしながら、現在まで実施してきている。そのため同じ条件での比較がしにくいが、ここでは同じ条件で実施した、2013年度入学生の1年次の評価点と3年次の評価点の比較をおこない、「伸び」が見られるかどうかを確認する。2013年度は、評価項目5)18項目(基本事項5点、形式項目10点、内容項目10点)合計25点満点で、評価をおこなった。表32013年度入学生の評価点平均点(SD)表4評価点レンジと人数分布人(%)表5論述文評価点の低い学生のIRTテスト結果表3に示したように、評価点の平均点は3年次の方が高くなっている。1年生と3年生の総得点の平均点には、統計的にも有意な差が認められた。また、表4には、評価点を5点ごとに区切ってそれぞれの人数を示したが、1年次に比べて3年次の方が評価点の高い層が多くなっている。このように全体的に評価点はよくなっており、語彙力だけでなく、書く力もついていると言えるだろう。ただし、論述文の評価点の低い学生(表4の網かけ部分。全体の25%程度)の日本語力テストの得点を見てみると、表5に示したようにIRT診断テストで中学生レベルと判定された学生には、論述文で高い評価点を得ている学生はいない。1年次にはIRT診断テストでは高3レベルと判定された学生が22人中13人(59.1%)とかなり多く見られるが、3年次には高3レベルは21人中9人(42.8%)にとどまる。つまり、3年次には、評価点の低い層には語彙力も低い学生が多く集まり、書くことに問題があることと語彙力が低いことが結びつく傾向が強まっている。よって、IRT診断テストの得点の低い層、特に中学生レベルの学生にはやはり書く際にも問題があると言えそうである。この点からも中学生レベルの学生には注意を払う必要があるだろう。―37―学生の日本語力の「伸び」に見られる傾向表12013年から3年分の学年別平均点(点(SD))2013 2014 2015197626.11(62.46) 82617.65(64.39) 79614.5(59.56)367650.25(61.89) 68631.97(69.96) 80646.88(69.72)462667.26(62.42) 62632.44(68.7) 55651.28(62.10)2013201420150210102521N88 3(N=76)2.95 4.43 6.05 6.86 4.26 5.71 * 13.262.5617.07(3.24) *t(161)=7.09, p<.01 1N88 3(N=76)1022(25.0%) 2 (2.6%) 11-1541 (46.6%) 19 (25.0%)16-2023 (26.1%) 43 (56.6%)21 2 ( 2.3%) 12 (15.8%)1103153 (3/8)6) 3 (3/3)7) 0 4 2 4 13 9 4 1 22 21

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