中部大学教育研究15
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2.302.402.502.602.702.802.903.003.10コントロールにおいて群と調査時期の2要因混合計画の分散分析をおこなったところ、交互作用が有意であった(F(2,195)=3.79,p<.05)。そこで単純主効果検定をおこなった結果、従来の教授法と統制群において、授業前より後のほうが、得点が高かった(それぞれF(2,195)=14.09,p<.001、F(2,195)=8.10,p<.01)。コントロールの教授法別の、授業前後の平均値を図8に示す。好奇心において教授法と調査時期の2要因混合計画の分散分析をおこなったところ、交互作用は有意ではなく(F(2,195)=1.42,n.s.)、教授法の主効果も有意ではなかった(F(1,195)=1.12,n.s.)が、調査時期の主効果が有意であった(F(1,195)=12.98,p<.001)。どの教授法であっても、全体的に好奇心は授業前に比べて授業後で高くなっていた。図9授業前後の各教授法における自信の平均値自信において教授法と調査時期の2要因混合計画の分散分析をおこなったところ、交互作用が有意傾向であった(F(2,192)=2.74,p<.10)。そこで単純主効果検定をおこなった結果、従来の教授法と改定後の教授法において、授業前より後のほうが、得点が高かった(それぞれF(1,192)=9.93,p<.01、F(1,192)=9.66,p<.01)。自信の教授法別の、授業前後の平均値を図9に示す。これらの結果から、キャリア・アダプタビリティに関しては、従来の教授法による「自己開拓」を受講することによって、コントロールと自信を持つようになったと考えられるようになり、また改定後の教授法でも自信が高まることが明らかになった。3.2.7授業前後の各教授法の変化のまとめ受講群を従来の教授法での授業を受けた学生(従来)と改定後の教授法での授業を受けた学生(改定後)に分けて分析をおこなった結果、自尊感情及び進路選択に対する自己効力、そして調整的セルフ・コントロールでは、教授法を分けても受講による効果は見られなかった。また従来の教授法は、時間的展望の広がり、時間的展望の中の希望の高まり、キャリア・アダプタビリティのコントロールの高まりと自信の高まりがみられた。一方、改定後の教授法は、時間的展望の現在の充実感の高まりとキャリア・アダプタビリティの自信の高まりがみられた。4まとめ2014年度の「自己開拓」では、これまで4年間で安定的にみられてきた効果が一部低下したことが分かった。さらに、「自己開拓」でも従来と改定後の教授法では効果が異なることが明らかになった。これらの結果の1つの理由として、1クラスが40名から60名に増加したことにより、これまでの参加型ワークショップ形式が成立しづらくなった可能性が挙げられる。つまり、40名のときよりも60名になったことで、学生の授業への参加度が低下し、効果が低くなった可能性である。今後、授業への参加度も指標に含めて、この点について検討する必要がある。また、改定後の教授法と従来の教授法で、授業目的が変化している可能性が挙げられる。従来の教授法は授業目的として、自尊感情を高める、自分の思考・言動の軸について考える、自分軸に基づく人生設計と行動計画を立てる、人生の多様性を受容するといった点を挙げていた。つまり、自尊感情や自己効力感、調整的コントロールといった、本研究で調査した尺度内容の向上を目的としていた。しかし、改定後の教授法を見てみると、自分軸に基づく人生設計と行動計画を立てる、といった自己理解の要素は少なく、コミュニケーション能力といった、他者と自己との相互作用をより重視している内容となっていた。そのため、自尊感情や自己効力感など、自己評価に関わる心理的側面は向上していなかった。今後、改定後の教授法は受講によってどのような心理的側面の変化がみられるのかをより詳細に明らかにするため、多様なコミュニケーション能力を測定していく必要があるだろう。また、「自己開拓」の受講は、卒業時の就職内定において、独自の正の影響がみられることが示されている(杉本・佐藤・寺澤,2014)。本研究で授業の教授法によって効果が異なることが示されたことから、卒業時に見られる長期的な効果もまた、異なる可能性が考えられる。今後、改定された教授法による「自己開拓」が、卒業時にどのような長期的な効果を示すのかを明らかにすることで、今後どのように教授法を改定していくのが望ましいのかを明らかにする必要があるだろう。―27―キャリア教育科目「自己開拓」の効果自信の平均値

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