中部大学教育研究15
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2.552.602.652.702.752.802.852.902.953.002.852.902.953.003.053.103.153.203.253.30図4授業前後の各群における自信の平均値これらのことから、キャリア・アダプタビリティにおいては、「自己開拓」受講によって好奇心を持てるようになり、自信を持てるようになることが示された。3.2授業前後の各教授法の変化受講群と統制群を比較した結果、「自己開拓」の受講によって、時間的展望が広がり、時間的展望の中でも現在の充実感が高まり、キャリア・アダプタビリティにおける好奇心と自信が高まるという効果が見出された。これまでの4年間の結果では、受講生の自尊感情の向上、進路選択に対する自己効力の向上、より広い時間的展望、改良型セルフ・コントロールの向上がみられており、時間的展望以外の効果が本年度は見られていないといえる。この結果の原因の1つとして、受講群において異なる授業形態が混合していることが挙げられる。これまでの4年間は、授業形態はどのクラスも同一であったが、本年度はクラスによって授業形態が異なっている。もし授業形態によって異なる効果がみられるなら、授業形態の違いを考慮せずに分析することによって、受講したことによる効果が相殺されている可能性がある。そこで受講群を従来の教授法での授業を受けた学生(従来)と改定後の教授法での授業を受けた学生(改定後)に分けて、分析を行うこととした。内訳は、従来20名、改定後76名、統制群99名であった。3.2.1自尊感情の変化教授法(従来・改定後・統制)×調査時期(授業前・後)の2要因混合計画の分散分析をおこなったところ、交互作用は有意ではなく(F(2,141)=1.20,n.s.)、教授法の主効果も有意ではなかった(F(1,141)=0.56,n.s.)が、調査時期の主効果が有意傾向であり(F(1,195)=3.45,p<.10)、教授法にかかわらず授業後には自尊感情が高まることが示され、「自己開拓」独自の効果は見られなかった。3.2.2進路選択に対する自己効力の変化進路選択に対する自己効力について、教授法と調査時期の2要因混合計画の分散分析をおこなったところ、交互作用は有意ではなく(F(2,195)=1.10,n.s.)、教授法の主効果も有意ではなかった(F(1,195)=1.10,n.s.)が、調査時期の主効果が有意であり(F(1,195)=5.54,p<.05)、教授法にかかわらず授業後には進路選択に対する自己効力感が高まることが示された。しかしこの効果は「自己開拓」の受講によるものとはいえないことが明らかになった。3.2.3時間的展望の変化時間的展望の教授法別の、授業前後の平均値を図5に示す。図5授業前後の各群における時間的展望の平均値時間的展望について、教授法と調査時期の2要因混合計画の分散分析をおこなったところ、交互作用が有意であった(F(2,195)=3.61,p<.05)。そこで単純主効果検定をおこなった結果、従来の教授法でのみ、授業前よりも授業後のほうが時間的展望が高くなっていた(F(1,195)=4.91,p<.05)。しかし、受講前も受講後も、教授法によって差は見られなかった(それぞれF(2,195)=0.11,n.s.、F(2,195)=1.95,n.s.)。つまり、時間的展望の広がりは、従来の方法のときにのみ、効果がみられることが示された。3.2.4時間的展望の詳細な変化従来の「自己開拓」を受講することによる時間的展望への効果がみられため、次に時間的展望の4側面のどこに効果がみられるのかを検討した。―24―佐藤友美・杉本英晴自信の平均値時間的展望の平均値

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