中部大学教育研究15
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巻頭言大学のもう一つの研究近代の大学には、フンボルトの大学論を持ち出すまでもなく、高度な研究活動による知の創造や啓蒙・普及活動が求められ、大学教育は学生を具体的な知の創造、啓蒙、普及活動へ参加させることでその効果を挙げてきました。20世紀も後半期になると、これらの知的な活動は大学の占有事項ではなくなり、公的な研究機関、民間の研究所やシンクタンク等によっても大きく展開されるようになりました。さらに、知の加工・流通はマスメディア等の発達により、いわゆる、評論家やジャーナリストの職分になってきました。これからも大学の研究が知の創造や技の開発によって社会の進歩と福祉に貢献することは変わらないでしょう。しかし、この伝統を大学の具体的な研究活動にどう位置付け、どう展開するかについては、研究者個人が厳しく自問自答する段階にあります。世界画一的な研究評価基準(発表論文のSCI値や発表学術誌のIF値等)での競争を続けるのか、自ら発想する研究課題を孤独に耐えてでも追及するのか、選択肢は個人の手中にあります。いずれにしても、大学の研究は教育との一体性を重視することで、他の研究セクターの研究路線とは一線を画すことも必要です。今日の大学には教育を重視し優れた人材を輩出することが大事な任務として求められています。この教育力は、「課題発見能力」と「課題解決能力」の育成であると言われています。これらの能力は学生が具体的な研究活動へ直接参加することによって修得するのです。大学は、「研究即教育」で「教育即研究」を進める教育研究環境を整備することです。ここに「中部大学教育研究」第15号を発刊することにしました。本号に掲載しました研究報告の一部は、本学の目指す課題発見と課題解決のための能力を育てるための個別事例研究の過程と成果をまとめたものです。ご活用いただければ幸いです。本号の企画と編集の労をとられた大学教育研究センター長はじめ編集委員の皆様に感謝いたします。2015年12月学長山下興亜

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