中部大学教育研究15
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・「同じクラスの実習生と協力し、連携できた。」→場面③⑥⑦⑧・「留学生の聞き取りにくい発話に耳を傾け、理解することができた。」→場面⑦・「限られた時間でやるべきことができ、自信がついた。」→すべての場面・「予想外のことも考え、授業を準備したため、うまく対応できた。」→場面③⑥⑦・「実習をしている時と、その録画を見ている時とでは、感じ方に違いがあった。客観的に見ることの大切さを知り、就活にも活かしている。」→場面⑧⑩・「友達である他の実習生の改善点を、客観的に指摘できた。」→場面⑥・「留学生の授業態度を見ることで、自分に観察力がついたと感じる。」→場面④・「宿題の添削で、留学生が何を伝えたいのか推測し、適切にコメントできた。」→場面⑨・「3年間日本語教員について学んできたが、まだまだ勉強することがあると思った。」→すべての場面実習生Dは、実習の経験をしたことで、積極的に話しかけられるようになったと自らの変化に気づいている。アルバイト先に来日したばかりの外国人が来店した際、逃げずに実習の経験を活かして、相手に合わせた話し方でコミュニケーションをとることができ、うまく接客できた満足感を感じたとしている。実習生Bは、実習時に就職活動と重なり、かなり厳しい調整が必要であった。自分なりにしっかり考え、何を優先すべきか判断を迫られる経験となり、管理調整能力が高まったとしている。実習生Cは、45分間の授業を時間どおり進めることで、限られた時間でやるべきことをしたという自信が持てたとしている。5まとめ以上のとおり、実習生は、実習のすべての場面から異文化対処能力の変化に影響を受けたと感じている。まず、留学生との接触場面において、自文化を意識し、留学生に関心や敬意を感じている。さらに、対象者が留学生であることから、様々な面において特別な配慮をし、その有効性を感じている。また、異文化接触の場面に限らず、実習生同士が恊働作業をすることにより、新たな人間関係が構築され、連携できたと感じている。これらの体験は、相手を意識し、これまで以上に責任感を持って取り組む機会となったと言えよう。これまでも、日本語教育実習が異文化対処力の変化に影響を及ぼしていると、経験的には理解してきた。しかし、今回の考察を通して、具体的な場面と結びつけて把握することができた。他の教育機関においても、日本語教育実習は異文化対処力向上と大きな関連性があるとし、さらに、日本語教員養成が「グローバル人材の育成」に寄与するという研究結果が報告されている(中川他2015)。言い換えれば、日本語教員養成講座は、たとえ実習生が日本語教員にならずとも、グローバル社会で活躍できる能力を獲得できる機会となっていると言えよう。今後は、より細かいデータ収集を積み重ね、「グローバル人材育成」を視野に入れた日本語教育実習プログラムの改善に活かしていきたい。参考文献1)池田玲子・小笠恵美子・杉浦まそみ子(2002)「実習生の内省的実践としての授業評価活動」『世界の日本語教育』12,95-1062)上田美紀・渡辺民江・生田裕子(2005)「日本語教育実習における体験理解の促進-PAC分析を通して-」『社会言語学会第16回大会発表論文集』124-1273)岡崎敏雄・岡崎眸(1997)『日本語教育の実習-理論と実践』アルク4)内藤哲雄(1997)『PAC分析実施法入門』ナカニシヤ出版5)中川良雄・天満理恵・上野山愛弥(2015)「日本語教員の養成は、グローバル人材の育成につながるか」『日本語教育方法研究会』vol.21,No.2,54-556)中川良雄(2008)「「気づき」を促す日本語教育実習-日本語教育実習自己評価・他者評価」『研究論叢』64,139-1547)山岸みどり・井下理・渡辺文夫(1992)「「異文化間能力」測定の試み」『現代のエスプリ』299,201-2148)大和啓子・生天目知美・永井涼子(2009)「教育実習における視野の拡大を目標とした反省会の試み」『日本語教育方法研究会誌』vol.16,No.1,80-819)渡辺文夫(2002)『異文化と関わる心理学』サイエンス社―17―異文化対処力からみた日本語教育実習における学び准教授教育支援機構日本語教育センター渡辺民江教授教育支援機構日本語教育センター上田美紀

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