中部大学教育研究15
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④授業見学:2週間に渡り、授業を見学し、見学表を提出する。尚、担当クラス以外の見学も含む。⑤実習日誌:実習日誌を提出し、指導教員のコメントをもらう。⑥模擬授業:指導教員に教壇実習の指導を受ける。⑦教壇実習:45分間の教壇実習を2回行う。⑧教壇実習の振り返り1:指導教員と共に録画を見ながら振り返る。⑨宿題添削:教壇実習の宿題を添削する。⑩教壇実習の振り返り2:録画を使い教壇実習を自己分析し、発表する。⑪実習反省会:実習生全員及び指導教員で実習全体を振り返る。4.2結果図1「異文化で成功するための要因」(山岸ら1992)の項目別にコメントをまとめ、実習生が具体的にどう影響を受けたと感じているかを示し、前述の実習の流れと照らし合わせた。4.2.1カルチュラル・アウェアネス・「敬語を教えたため、その概念が留学生の出身国にあるかどうか等、文化に対する意識が強くなった。」→場面②⑦・「教壇実習の録画を見て、自分自身を見つめ直すことができ、焦った時に早口になる等に気づいた。」→場面⑧⑩・「授業中に質問したり、宿題の書き方で意思表示をしたりする等、本気で勉強していると感じ、留学生に敬意を持った。」→場面④⑦⑨・「留学生の母語に関する質問をし、文化的視点で見ると更に面白そうだと感じた。」→場面⑦・「背景の異なる留学生に対し、日本語学習の目的に興味を持った。」→場面④⑦実習生Aは、敬語を教えるにあたり、留学生の母語の概念に敬語があるかどうかで理解度が大きく違うことに気づいた。日本語と同様にどの言語でも同じ概念があると思い込んでいたため、教案に大幅な変更の必要があった。この経験で、実習生Aは留学生の出身国の文化や習慣により強い関心を持つこととなった。実習生Bは、見学時に留学生の学習態度を見て、日本語学習に対する熱意を感じとった。また、他の実習生の授業においても納得できるまで何度も質問する学習意欲の高さに驚き、敬意を感じることとなった。4.2.2感受性・「留学生は、日本人にはない発想力・想像力を持っていると感じた。」→場面④⑦・「実習生控え室で約3ヶ月過ごし、他の実習生のことを考えて行動できていた。」→すべての場面・「留学生に対し、どう話せばわかってもらえるか気づけるようになり、相手の反応に合わせた行動がとれるようになった。」→場面③⑥⑦⑧⑩実習生Cは、様々な出身国の留学生と関わることで、彼らの考え方やファッション等に触れた。それにより、日本人とは違った発想力・想像力を目の当たりにし異文化への感受性が高まったとしている。また、他の実習生と協力し、良い人間関係を保ち、お互い支え合いながら実習を乗り切ったことで、以前より他人に対する配慮ができるようになったとしている。実習生Aは、当初は自らの教案を使って予定どおり進めることに精一杯であった。しかし、見学や教壇実習の練習を通して、留学生の日本語力や文化背景に合わせ、どう説明し、どんな例を挙げれば理解しやすいか等、配慮できるようになったとしている。4.2.3自己調整能力・「留学生の様子を感じ取り、それに対応できた。」→場面⑦・「宿題の添削で、留学生の間違いの理由を冷静に分析できた。」→場面⑨・「他の実習生と考えが合わない部分もあったが、抵抗を感じなくなった。」→すべての場面・「留学生にわかってもらえなくても、イライラせずに冷静に対応でき、少し寛容になったと感じる。」→場面③⑥⑦実習生Bは、実習生控え室で、4人で過ごすことが多く、ストレスを感じ、体調に表れてしまった。しかし、それを乗り越えた経験で自らが鍛えられたとしている。実習生Cは、宿題添削時に留学生の誤答について、なぜそのような間違いをしたのかを客観的に分析することによって、感情的になっていない自分に気づいたとしている。実習生Aは、他の実習生と考え方が合わない部分もあったが、他学部・他学科といった自分と違う環境にある人に抵抗を持たずに付き合えるようになったとしている。4.2.4状況調整能力・「実習で様々な経験をしたことで、バイト先に外国人が来たとき、逃げずに自ら話しかけることができた。」→すべての場面・「おしゃべりではなく、きちんと理解してもらえるように話すことができ、留学生に向き合うことができた。」→場面③⑦⑨―16―渡辺民江・上田美紀

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