中部大学教育研究15
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れ、緊張と不安の中、教壇実習をやりきるのであるが、2回目の教壇実習では留学生とのコミュニケーションもある程度スムーズになり、達成感を得ることとなる。2.2.5反省1回目の教壇実習後には実習担当教員が録画を見ながらコメントをし、2回目の教壇実習に向けた改善点を示す。例えば、視線が1人の留学生に集中している、同じ言葉を連呼したが通じていない、どんどん早口になっている、留学生の発話が聞き取れていない、板書の前に立ち留学生からは見えない等の指摘が多い。これらを改善することが、2回目の教壇実習の具体的目標となっている。2回目の教壇実習後については、実習生自身に分析させ発表させている。各自、1回目に指摘されたことを踏まえ、改善できたか否かを報告する。最後に、指導教員、実習生が全員集まり、日本語教育実習を振り返る機会を設けている。それぞれの感想、学んだこと、気づいたこと等を語り合う機会となっている。3調査方法2015年春学期に行われた日本語教育実習参加者4名に対し、実習終了後に質問紙調査を行い、半構造化インタビューを行った。質問紙作成にあたっては、図1「異文化で成功するための要因」(山岸他1992)を枠組みとした。これは、企業からの派遣や留学において成功する人材の能力を測ることを目的に開発されたものである。開発にあたっては、企業の海外人事担当者の面接結果やそれまでの研究成果を組み合わせたとしている。渡辺(2002)は、図1の特徴を、通常の仕事をするときに求められる力、つまり「状況調整能力」と、異文化と対応するときに特に求められる能力、つまり「カルチュラル・アウェアネス」「自己調整能力」、そしてこれら3つの能力の中核となる「感受性」を組み合わせ、統合的に異文化接触での資質をとらえようとしたところだとしている。本稿では、この枠組みに示されている項目を参考に、能力の変化についての質問を作成した。4結果質問紙、およびインタビュー結果から、「実習生が日本語教育実習のどの場面で異文化対処力の変化に影響を受けたと感じているか」を抽出し分析した。4.1実習の流れ(場面)以下、実習の流れと具体的な場面を示す。①オリエンテーション:実習の心構え・スケジュール・課題・実習項目の提示等を受ける。②実習準備の講義:週1コマ(90分)の授業で、実習項目の分析、見学表・教案作成の書き方、クラス分析等の指導を受ける。③教案作成:教案を作成し、指導教員の添削指導を受ける。―15―異文化対処力からみた日本語教育実習における学び8)コミュニケーション10)マネイジメント11)判断力・対話能力・経営能力・客観的判断力・語学ができる・管理能力・特定状況での反応・言語能力・仕事を管理する能力・代替案を作り出す能力・システム発見の能力・調整能力(語学)・マネージャとしての・説得力がある手腕・敬意の表現/伝達能力・外交的手腕/気転が・非言語的言語の感覚きく・意思疎通への積極性・トラブル処理能力・自分の意見を批判され・外交能力/戦術ても冷静に耳を傾ける・相互作用の管理・イニシアティブ・社会的信用を高める事ができる能力・組織能力9)対人関係12)知的能力・対人関係を確立し維持・知識する能力・知的興味・人間関係の構築・敏感な知性・社交性(友人を作る力)・観察力・人の話を聞く・見えないシステムを・人間関係の状況の正確な見つける能力判断力・パターン認識力・人間関係に関する技能・システム発見の能力・複雑な対人関係の理解力1)自文化(自己)への理解)・自分の国の文化の理解・自己概念・セルフ・モニタリング・自尊心2)非自民族中心主義・非自民族中心主義・自民族中心主義により偏見を持たない・相手国の現地人に対する尊敬3)外国文化への興味・相手国の文化の理解・相手国民への興味・相手国の文化に対する関心・外国文化への興味・地域社会への関心・好奇心が強い・現地人との協調性5)寛容性・トーレランス・心理的ストレスに対処する力・曖昧性に耐える事6)柔軟性・柔軟性・異文化(食事・習慣)への適応性・厳格(でない事)・判断しない事・順応性7)オープンネス・解放性・開かれた考え方・行動を規範など自分の価値で分類しない・受容カルチュラル・アウェアネス状況調整能力4)感受性・感受性・異文化間的な感受性・文化面においての感受性・情緒の安定・気分転換の手段を持っている・感情移入・他人に対する配慮・他人の態度に対する感受性・共感性・文化的共感性自己調整能力図1異文化で成功するための要因(山岸他1992)

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