中部大学教育研究15
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己開拓」を受講していない者ほど進路未決定の比率が高い傾向にあった。また、卒業時点では、「自己開拓」を受講した者ほど進路未決定の比率が有意に低く、「自己開拓」を受講していない者ほど進路未決定の比率が有意に高かった。さらに、「自己開拓」の受講による就職先の違いを検討するため、企業規模に注目した検討を行った。卒業時点で就職した者の中で、就職先の資本金と従業員数について回答が得られた者を抽出した。その結果、抽出されたのは就職先の資本金については135名、就職先の従業員数については132名であり、それぞれを分析対象とした。「自己開拓」の受講と就職先の資本金との連関を検討すべく、「自己開拓」の受講群と統制群(非受講群)の就職先の資本金別(1000万円以下、1000万円~5000万円、5000万円~1億円、1億円~10億円、10億円以上)の人数について、各条件の集計を行った(表3)。その上で、χ2検定を行った結果、「自己開拓」受講群と統制群(非受講群)において、資本金別の有意な人数差はみられなかった(χ2(4)=2.67,n.s.)。また、「自己開拓」の受講と就職先の従業員数との連関を検討すべく、「自己開拓」の受講群と統制群(非受講群)の就職先の従業員数別(100人以下、100人~300人、300人~500人、500人~1000人、1000人以上)の人数について、各条件の集計を行った(表4)。その上で、χ2検定を行った結果、従業員数別においても有意な人数差はみられなかった(χ2(4)=3.76,n.s.)。3.3就職ガイダンス参加状況と就職決定「自己開拓」の受講の有無によって、就職ガイダンスへの参加率の差はみられなかったが、受講の有無によって就職決定に差がみられることが確認された。ここで、「自己開拓」の受講の有無にかかわらず、就職ガイダンスに積極的に参加した者が、就職先を決定した可能性について検討の余地がある。そこで、就職ガイダンスの参加状況が就職の決定に及ぼす影響を検討すべく、就職ガイダンスの参加率の平均値(89.02%)を基準に参加率の高群と低群の2群に分類し、卒業時点の就職状況(就職、進路未決定)を集計した(表5)。その上で、就職ガイダンス参加状況による卒業後の進路状況の人数の偏りを検討すべく、χ2検定を行った。分析の結果、就職ガイダンスの参加状況別の就職決定状況に有意な人数の偏りはみられなかった(χ2(1)=0.40,n.s.)。すなわち、就職ガイダンスへの参加率の高さは就職先の決定に影響を及ぼしていないことが明らかとなった。3.4「自己開拓」に対する意味づけ「自己開拓」が進路決定に影響を及ぼすメカニズムについて検討すべく、「自己開拓」の受講者における「自己開拓」に対する意味づけを検討した。「自己開拓」を受講したことに対する意味づけについて回答が得られた71名は全て卒業時点での進路決定者であり、進路未決定者からの回答は得られなかった。収集された自由記述回答について、心理学を専門とする大学教員2名でKJ法により分類した(表6)。まず、授業に対する意味づけをポジティブな意味づけとネガティブな意味づけに分類したところ、9割以上の学生が「自己開拓」に対してポジティブに意味づけており、2割程度がネガティブにも意味づけしていた。その上で、内容について詳細な分類を行ったところ、ポジティブな意味づけとして、他学科との交流やグループワーク、体験型講義といった教育方法を肯定的に捉える記述が得られた(49.30%)。また、授業の教育効果に関して、自己理解や視野の広がり、大学や将来への見通しなどの自己に関する発達が促されたという記述が得られた(54.93%)。さらに、自分の意見を伝えることや相手の意見を聞くこと、コミュニケーション能力の向上、初対面の人との関係性の構築やよりよい関係性の形成スキルの獲得、さらには集団行動といった対人関係に関する発達が促されたという記述も得られた(35.21%)。他方、ネガティブな意味づけについては、教育方法や自己・対人関係に関する教育―8―杉本英晴・佐藤友美・寺澤朝子表5就職ガイダンス参加率高群と低群の就職決定状況別の人数と比率

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