中部大学教育研究15
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すなわち、進路決定者においてこうした意味づけが授業に対してなされていると予想される。本研究により平成22年度のコホートのみならず、平成23年度のコホートにおいても「自己開拓」の長期的な教育効果が検証されるのであれば、「自己開拓」の受講の意義を進路意思決定プロセスの観点からより明確にできるだろう。その結果、本授業をより多くの学生が受講できるよう課程内に拡充することで、本学全体の就職率向上につなげることが可能となる。また、進路決定者の「自己開拓」に対する意味づけを検討し、「自己開拓」の受講によって進路決定が導かれるメカニズムを明らかにすることができれば、「自己開拓」の授業の中で進路決定を導く教育効果をどのように高めることができるか検討することが可能となり、本研究の結果をもとに授業内容をより適切に改善していくことができるだろう。このように本研究は、本学におけるキャリア教育の今後の方向性を定める上でも非常に意義があるといえよう。2方法2.1調査対象者調査対象者は、平成23年度に「自己開拓」を受講し平成27年3月に卒業を迎えた学生117名(所属学部:工学部・経営情報学部・国際関係学部・人文学部・応用生物学部・現代教育学部)と、同時期に卒業を迎え卒業までに「自己開拓」を受講しなかった学生から無作為抽出された119名(所属学部:工学部・経営情報学部・人文学部・応用生物学部)であった。学部事務室経由で質問紙調査が配布され、後日回収された。そのうち回答に不備の見られなかった調査対象者の中で平成23年度入学者に限定し、1年次に「自己開拓」を受講した学生80名(<「自己開拓」受講群>;有効回収率68.38%)と卒業までに「自己開拓」を受講しなかった学生92名(<統制群(非受講群)>;有効回収率77.31%)の計172名(「自己開拓」受講群:男性65名、女性15名;統制群(非受講群):男性73名、女性19名)を分析対象者とした。平均年齢は21.78歳(SD=.66)であった。2.2調査内容就職ガイダンスへの参加状況キャリア支援課(キャリアセンター)が主催した計9回の就職ガイダンスへの参加の有無についての情報を得た。なお、この就職ガイダンスは調査対象者が3年次に行われたガイダンスで、オリエンテーション、適職診断テスト、業界・企業研究、適職診断テストをもとにした自己理解ワークショップ、就職試験対策、履歴書ガイダンス、面接ガイダンス、SPI対策模擬テスト、学内企業説明会事前ガイダンスという構成であった。調査時点の進路状況調査時点の就職活動状況および進路先について回答を求めた。就職活動の状況(まだ行っていない、就職活動中、就職活動を終えた)について回答を得た上で、具体的な進路先について自由記述による回答を求めた。大学卒業時点の進路状況大学卒業後の進路先(2015年4月15日付)について、大学卒業時点の進路状況(就職、就職活動中、進学、留年)の情報を得た。また、就職者については、就職先の企業規模に関する情報(資本金、従業員数)も収集した。「自己開拓」の受講に対する意味づけ「自己開拓」を受講した時点を想起してもらった上で、調査時点での「自己開拓」受講に対する意味づけについて自由記述による回答を求めた。2.3調査時期・調査手続き2014年12月に調査を行い、就職活動状況と進路先、および「自己開拓」の受講に対する意味づけに関する回答を得た。その上で、卒業時点の進路状況の内容の提供について調査対象者に了承を得た。了承が得られた調査対象者について、就職ガイダンスの参加状況、および、大学卒業時点の進路状況について、キャリア支援課(キャリアセンター)から情報を得た。なお、本研究は個人情報の保護に十分に留意すべく、中部大学倫理審査委員会から情報提供に関する承認を得た(承認番号:250039)。3結果3.1「自己開拓」受講と就職ガイダンス参加はじめに、「自己開拓」受講群と統制群(非受講群)の就職ガイダンスの参加率の平均値と標準偏差を算出―6―杉本英晴・佐藤友美・寺澤朝子図1「自己開拓」受講群と統制群(非受講群)の就職ガイダンス参加率の平均値就職ガイダンス参加率

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