中部大学教育研究15
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康科学部理学療法学科が春日井市という地元社会における高校に対して役立つ方法を考えた場合、大学側の専門家(理学療法士)が直接高校に足を運び、高校運動部員に対してスポーツ外傷・障害の予防のために「自身でできる予防策」を実技指導すべきと考える。そこで、スポーツ医療に関係する情報を提供することが重要であると考える。高校運動部においては近年、顧問教員による指導経験の有無や専門性の違いなどで、十分な部活動運営が困難になっていることが問題となることが多い8)。しかし、専門性などは顧問の教員に責任があるわけではなく、社会構造的問題である。その一方で、部員のスポーツ外傷・障害の問題についてまで負担をおわされる状況にある。そのため名古屋市などでは部活動外部指導者派遣事業・部活動顧問派遣事業を展開し9)、学外の力を活用する動きが強まっている。愛知県も教育委員会事務局保健体育スポーツ課の事業として、「県内の小・中学校及び高等学校を対象に、学校体育の一層の充実を図るための指導資料とするために、体育、保健体育の授業や野外活動の実施状況等の調査」10)を実施し、「中学校及び県立学校の運動部活動へスポーツトレーナーの派遣及び地域のスポーツ指導者を配置し、よりよい活用についての実践的な研究を行う」ことを計画している。様々な障壁は多いものの、今回取り上げた春日井市内の運動部におけるスポーツ外傷・障害に関連する現状と問題点を改善するために「地域貢献」や「高大連携」のシステムを活用することが有効と考える。なお本研究の限界としては、アンケート調査の対象の背景や人数が大きく異なり、十分な比較ができないことがあげられる。そのため、今後の展開としては対象数の増加や対象の条件設定を詳細に行う必要がある。8まとめ春日井市内の高校運動部におけるスポーツ外傷・障害に関する問題を調査し、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」を活用し、「地域貢献」「高大連携」「スポーツ理学療法」をキーワードとして対応策を検討した。高校生はスポーツ医療に関する情報収集が十分にできない一方で、自分自身による予防策を知りたがっていた。中部大学生命健康科学部理学療法学科としての知識と技術を活用し、具体的な対策を実技指導し、高校運動部員に修得させることで課題解決への一助となると考える。文献1)地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/cco/(2015年8月6日)2)初等中等教育と高等教育との接続の改善についてhttp://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chuuou/toushin/991201.htm(2015年8月6日)3)高等学校教育の改革に関する推進状況http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kaikaku/2007/index.htm(2015年8月6日)4)春日井市総合計画推進市民委員会による施策評価と事業提案(平成22年度).春日井市.2010.5)宮下浩二・矢澤浩成ほか:地域住民のための運動療法サービスシステムのモデル化事業開発研究~第1報~.生命健康科学研究所紀要7:48-54,2010.6)独立行政法人日本スポーツ振興センター学校安全部安全支援課:課外指導における事故防止対策調査研究報告書,2010.7)リクルート進学総研:高校生価値意識調査2014,2014.8)公益財団法人日本体育協会指導者育成専門委員会:学校運動部活動指導者の実態に関する調査報告書,2014.9)大勝志津穂:部活動における地域の人材活用-名古屋市の部活動外部指導者の取り組みについて-.東邦学誌40(1):35-46,2011.10)愛知県教育委員会事務局保健体育スポーツ課http://www.pref.aichi.jp/0000005678.html(2015年8月6日)―4―宮下浩二・矢澤浩成教授生命健康科学部理学療法学科宮下浩二講師教育支援機構医療技術実習センター矢澤浩成

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