中部大学教育研究15
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表5スポーツ外傷・障害予防に必要な項目(高校)運動部顧問の回答を表6に示す。42.9%の顧問が医療機関に対して「本人ができる予防法の指導」を求めており、部員同様に選手自身のセルフケアが最も重要であると回答していた。表6スポーツ外傷・障害予防に必要な項目(教員)7考察近年、高校の部活動に関する様々な問題がとりあげられる機会が増えているが、以前より最も大きな課題の一つは運動部の部活動に伴って生じるスポーツ外傷・障害に関連する事象である。スポーツ外傷・障害によって満足にプレイが継続できなかったり、競技を中止せざるを得なくなったりすることも少なくない。それ自体で挫折感を感じることがあり、さらには、部活動の継続が困難となることで退部に至るケースも後を絶たない。そのため、スポーツ現場や関連学会等からはスポーツ外傷・障害の予防の重要性が指摘されている。スポーツ振興センターによる「課外指導における事故防止対策調査研究報告書」でも全国で様々な取り組みがなされ、スポーツ外傷・障害への対策が紹介されている6)。高校生自身もスポーツ外傷・障害については予防したいと考えるのは当然である。そのため、予防に必要な情報を入手するスキルも重要となる。スポーツ医療に関連する情報は現在、玉石混交の状態でインターネット上に氾濫している状況であり、手軽に入手できる。高校生はスマートフォンなどのモバイル機器を所有する率が非常に高く、2014年で所有率は82.2%にも達している7)。スマートフォンに代表されるインターネット関連機器を使用し、様々な情報を得ている。スマートフォン等の利用目的は「アプリの利用」「調べもの・情報収集」「コミュニティサイトへの参加」「動画を見る」「メール」が8割を超えており、幅広い使われ方をしている。またスマートフォンで勉強をしている高校生も約6割に上っている。目的の中で「調べもの・情報収集」が上位に位置づけられている7)が、本研究においてはこれらのツールを用いて「スポーツ医療に関する情報」を収集する高校生は非常に少ないことが明らかになった。つまり、このような医療情報は高校生が行うことのできる調査の対象外の項目となっていると考えられる。インターネットツールだけが情報源ではなく、比較対照の大学生は様々な情報源から積極的に情報を収集している。このように大学生は情報収集に関するスキルを獲得しつつあることが推察される。高校生は医療に関する行動について、自身による判断基準を持ち得ていないのであろう。スポーツ外傷・障害を負った後、どのように情報を入手したらいいか理解できていないため、冒頭で述べたような問題が生じていると考えられる。高校生は、形式知および実践知ともに非常に少ない。そのため、「親」に依存して情報を得ており、多少その範囲が広がっても「友人」に聞く程度であった。または、「家や高校などの近くの医療機関」が多かったことは、通学中などにみかける医療機関に行くというきわめて消極的な情報への対応行動であると考えられる。しかし、「病院等に行く場合、どのような情報が必要ですか?」に対して高校生は「医療の質・治療の内容」とする割合が最も高く、自身の問題に対してより良い状況をもとめていることが伺える。さらには「けがや故障を予防するため、または早期に競技復帰するために必要と思われることは何でしょうか?」に対して多くの高校生が「自分自身で対応策を習得」と答えた。つまり、何かに依存するのではなく、自分で日常的に実施可能なスポーツ外傷・障害予防策を習得したい、という思いである。また部活動の顧問を務める教員も、生徒のスポーツ外傷・障害予防のためには、「本人ができる予防法の指導」が重要と考える割合が高く、部員と指導者ともに同様の答えとなっていた。このような課題および結果に対して、大学が地域貢献、高大連携として実施するためには大学が高校部活動にいかにして情報を送るかということが重要な検討事項となる。本プロジェクトは「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」選定取組の「春日井市における世代間交流による地域活性化・学生共育事業『コミュニティ情報ネットワーク』として「地域に役立つ情報ネットワークの構築」がベースとなっている。そのため、当初は高校生に活用されるようなインターネットを活用した情報サイトを作成することが計画された。しかし、実際には今回の調査結果のように高校生にとってはスポーツ医療情報についてはインターネット活用の対象外であり、直接的な指導の機会をつくり、情報伝達をするような対応の必要性が感じられた。本プロジェクトのキーワードは「地域貢献」「高大連携」「スポーツ理学療法」である。中部大学生命健―3―「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC)」による地域貢献・高大連携を活用した春日井市内高校運動部でのスポーツ外傷・障害予防の試み

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