中部大学教育研究14
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みがあると、それに合わせて同程度の人数の韓国人学生を受け入れているようであり、比較的容易にグループワークを軸としたプログラムを組みやすい状況にあるようである。一方、パジュキャンプや、日本からの英語研修を管轄する研修旅行業者は、研修プログラム中にソウル市内見学を入れることがある。そのように、英語研修ではあるが、研修を行う韓国という地域自体に関心がある学生の場合には、また別の意味があるだろう。本学部の場合、韓国語を学び、韓国に関心のある学生がいるので、そのような学生には、英語を学ぶにせよ、韓国人学生とコミュニケーションをとることや、韓国社会の研修やあるいはフィールドワーク実習としての意味もあるだろう。それこそ韓国における英語教育のフィールドワークと考えれば、英語研修そのものが意味のある題材であるかもしれない。4まとめ本稿においては、韓国の「英語村」について、筆者らが行った視察をもとに紹介しつつ、語学研修やフィールドワークなどでの利用可能性について検討した。ここまで示した内容を整理しつつ、研修の可能性について以下に示したい。まず、英語の研修先として利用することを考えるならば、海外旅行をしたことがない学生、英語に苦労をしている学生であれば、パジュキャンプのような英語村の研修は一つの入口として考えることができるものと思われる。それは、このような英語村が、本来高校生以下の学生を対象としていたため、体験学習など初級者が参加しやすいプログラムを持っているためである。さらに筆者らが関心を持っている「アジア関連就職」を目指そうとする学生がいるとすると、やはりアジアを中心とする、英語を母国語としない他国の学生と英語でさまざまな共同作業を行うことは非常に意味があるものと思われる。これはおそらく英語村側も意識しているものと思われる。また本学部学生で韓国語や中国語を中心として語学学習を進める学生がいるが、そのような者は英語を苦手とする傾向が強い。そのような学生が就業を考える際にいわば第二外国語としての英語を学びなおす契機になるかもしれない。英語研修という目的をやや離れると、韓国やアジア国家に対する一種のフィールドワークや、学生による取材活動としてとらえることも可能であるだろう。韓国人学生と一定期間同室で過ごしながら英語でコミュニケーションをとり、相手に関心を持つこと自体に意味があると思われる。特に韓国社会や英語教育に関心のある学生に適切なフィールドワークになるのではないだろうか。実際、英語の教職課程をもつ日本のある女子大学では、「教職フィールドワーク」先として韓国の英語村に関心を持っている。また、韓国は日本人にとって食文化等の面でストレスが少なく、滞在しやすい地域である。業者からは、「ここで合わないようなら、そもそも留学はあきらめたほうがよいのでは」との紹介もあった。他のアジア地域に比べ、韓国は、日本人が過ごしやすい地域であることは明らかであり、「留学の入門編」としては最適である。反面、すでに米国やヨーロッパなどに長期留学をしたことのある学生や、長い海外滞在経験のある学生には、あまり意味がないように思われる。韓国英語村での研修は、学生の属性によってその価値が大きく変化する。また研修費用に関しても、本学部学生に聞くと、7日間では「近いわりに高い」というイメージを持つようである。経済的な面で参加したくないと考える学生もいるであろう。さらには、もし教員が引率をしようとした場合、英語村を出るとあまり英語が通じない可能性があり、やや困難を感じることがあるかもしれない。韓国の英語村で研修を実施する際には、教育内容だけでなく、このような外部条件も詳細に検討する必要があるだろう。謝辞本報告は平成25年度中部大学特別研究費CP「外国語ニュースの翻訳・発信を契機とした国際知識と学術用語習得の試み」の一部を使用した。注1)近年日本でも長崎県のテーマパークであるハウステンボスの一部を「イングリッシュスクエア」として、英語のみが通用する区域とし、それらを利用しつつ英語教育を行うというプログラムができているが、今回訪問した英語村パジュキャンプに非常に近い発想である。参考文献【各種文献】奥野浩子訳「英語教育革新方案政策参考資料」(韓国教育人的資源部、2006年)、弘前大学人文社会論叢人文科学篇、2008、pp.27-79樋口謙一郎「韓国の英語教育政策現状と展望(上)-「教育課程」の改定とその背景-」、2010、英語教育59-4、pp.66-68木村隆「韓国の英語教育政策現状と展望(下)-その後の韓国「英語村」-」、2010、英語教育59-6、―85―韓国英語村調査報告

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