中部大学教育研究14
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韓国各地に作られはじめ、現在では全国に60あまり存在する。英語村とは、一種の英語教育施設で、単に英語を教えるだけでなく、その敷地や施設内ではすべて英語だけで過ごすことにより、生活面も含めて英語漬けにし、その能力を伸ばそうという目的を持っている。日本でも近畿大学や鳥取環境大学などで近年同様の施設が設置されている。一面では、留学や海外渡航ができない家庭の子女にも、格差なく疑似留学体験をさせる施設であるとも言える。それによって韓国でやや問題視されつつあった、小中学生を海外に送る「早期留学」を抑制しようという目的もあったと考えられる(樋口、2010)。またその対象は、本来大学生や社会人ではなく、高校生以下、特に小中学生である。これは小学生で英語を教え始めたことと関連すると思われる。これら英語村は、当初は韓国人の生徒をネイティブスピーカーの教員が教えるという内容であったが、次第に社会人や教員を受け入れるプログラムも整備しつつあるようである。さらには外国人の生徒を受け入れ、英語で交流をさせるという内容を志向し始めているようである。今回視察のため訪問した京畿英語村パジュキャンプは、その中でも比較的規模が大きく、かつ唯一地方自治体である京畿道(日本の県レベル)が運営している、いわば公営の英語村である。この英語村でも日本、ロシア、タイなどの外国人学生を受け入れ、韓国人学生と英語で作業をするプログラムを行っている。3京畿英語村パジュキャンプの特性3.1施設概要と研修期間京畿英語村パジュキャンプは、ソウルの北方約20~30㎞、バスなどで1時間弱程度の京畿道坡州(パジュ)市内にある。施設は市内に新たに建設された坡州新都市内の面積278,253㎡の広大な敷地に作られている。パジュキャンプは、おそらく韓国最大の英語村であり、収容人員は約750名である。敷地内には、英国の村を模した家々が建設され、テーマパークのような印象である(写真1、2)。事実、英語での講演が行われるコンサートホールなどもあり、英語の訓練とは関係なく散策に訪れる一般客もいる1)。コンサートホールのほか、このような「英国風」の建築物の中に、教室棟、体験教育施設、学生宿舎、食堂、管理事務所、スポーツ施設、訪問者のための商業施設などが作られている。中には、英語での生活訓練のための郵便局、医院、入国管理事務所(訪問者用チケット売り場)なども設置されている。この敷地の中は、基本的に英語でだけコミュニケーションができるということになっており、英語学習プログラムだけでなく、日常生活も英語で行うことで、英語圏の地域に留学したかのような効果をもたらそうとしている。学生宿舎は、6名1室とされ、社会人や引率者用の宿舎は2名1室となっている(写真3)。学生の場合は、ルームメイトに他の国籍の学生が来るように部屋割りがなされるようである。食堂はカフェテリア式で、滞在中は三食ともこの食堂で食事をとることになる。写真1ソウル北方の坡州市に位置する英語村「パジュキャンプ」写真2英国の村を模した英語村内部写真32名1室の宿舎内部―82―澁谷鎮明・舛山誠一・伊藤裕子・中野智章・財部香枝

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