中部大学教育研究14
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定的にとらえ、社会的スキルが向上し、グループの関係が改善されたことなどが報告されている7)8)9)10)。杉江(2011)2)は、授業づくりにあたって、子どもに学ぶ気を起こさせるために「導入の工夫」を教師の多くが行っているが、導入そのものに興味づけることが目的ではなく、導入ののちの学習への意欲を高めることこそ大事であると述べている。導入に用いる教材が導入後の授業への関心を高め、授業の理解を深めるものであることが必要である。そこで、授業の理解を深める事前学習として「わからない用語調べ」を行って、授業初めの15分間にグループでの事前学習セッションを導入して授業への動機づけとした。導入した科目は成人急性期看護学Ⅰ(以下、急性Ⅰ)の第8回から11回までの4回である。ここでは、第8回「広範囲熱傷患者の看護」の授業後の反応と、第15回の「わからない用語調べ」に対するアンケートの結果を報告する。2授業概要本学科における急性Ⅰは、カリキュラムの中では学科専門科目に位置づけられる。主に成人期にある人々を対象とした看護介入科目であり、生命の危機状態並びに救命の治療過程にある人・家族への援助方法を習得する。受講生は本学科2年生93名である。第8回「広範囲熱傷患者の看護」は、テキストの約15ページに書かれている内容を理解しなければならない。授業の内容は熱傷患者の心身の特徴、重症度の判断基準、熱傷の病態に基づく回復過程、経過に沿った治療、看護について教授する。授業で用いるスライドは、表や図、写真を多用して、実習前の学生でもイメージしやすいように配慮している。また重症度判断のスケールについては知識として知るだけでなく、熱傷範囲の計算問題を取り入れてスケールの活用を促した。さらに、事前に配信するスライド資料は、重要な用語を()にして空白にしている。テキストを理解できれば用語を()内に書き込むことは容易である。2.1事前学習の提示の仕方杉江(2011)2)は、学習課題を提示する際には、「端的に表現しようとせず、学習者に理解されるように丁寧に記述する」ことが重要であると述べている。学習課題は、グループの目標であると同時にクラスの目標である。二酸化炭素の実験授業であれば、「二酸化炭素の実験をしよう」ではなく、実験を通して学んでほしいことを明確にする。「二酸化炭素の実験を通して、二酸化炭素の性質を3つ以上、仲間に説明できるようになろう」という表現にして、クラス全員にわかる表現にすることが大切だと述べている。そこで、予習の内容が明確にわかるような表現に留意して事前学習のプリントをライブラリーにアップした(表2)。表2「重症熱傷患者の看護」事前学習2.2事前学習セッションの実施TBLとLTDを参考に事前学習「わからない用語調べ」のグループ共有手順(事前学習セッション)を作成し、授業の初めに学生に配布した(表3)。グループは学籍番号順に並んでいる座席を崩さず、近い者で4~5名のグループを作った。協同グループでは、話し合いを始める前にお互いの体調を知って相互に配慮することが大切である。そこで、1人30秒程度の「アイスブレイク」を設けた。次に各メンバーが役割を認識して活動できるように進行係、タイムキーパ-などを決めた。ステップは1~4まであり、ステップ1は個人思考で行う。調べてきた用語の中から、今日の授業を理解するのに重要な用語に黒○を付け、自信をもって説明できる用語に◎を、調べてはきたけれども納得しきれていない用語に△をつける。ステップ2は○や◎、△を付けた用語をメンバーと共有する。△の用語はグループの課題となるため、すべてのメンバーがその用語を用紙の余白に書き加える。ステップ3はメンバー全員から出た△の用語を、説明できる学生が説明する。1語あたり1分程度を目安とする。グループの誰も説明できなかった△の用語は赤△に変更される。これらの用語について、テキストに載っていないか索引を調べ、載っていない用語は記入欄に列記する。ステップ4は、授業後の個人思考を行う作業である。学生は授業を通して△用語の意味が理解できることがよくある。学生は、授業後に青のボールペンでより適切な説明を考えて記入する。最後まで意味がわからなかった用語には赤で×をつける。この用語については―76―牧野典子・江尻晴美・中山奈津紀

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