中部大学教育研究14
85/110

St. 1St. 2St. 3St. 4St. 5St. 6St. 7St. 81はじめに本研究は看護大学生が専門科目の授業の理解が深まり、授業に積極的な姿勢で臨むことができるようになることを目的に、「わからない用語調べ」を事前学習の課題とし、個人学習とグループ学習とで構成するセッションを2年生の看護専門科目の授業に適用した実践報告である。協同的な学び合いとは、協同学習の考え方を基盤においたグループ学習のことであり、単にグループで活動する学習ではない。協同学習の考え方には5つの基本要素がある1)。互恵的な協力関係:協同グループを用いるときには互恵的な協力関係を構築するところから始める。個人の責任性:グループ全体としての成果が問われるときのグループに対する責任性と、グループの成功のために個人に割り当てられた役割を果たすべき責任性とが存在する。協同グループの目的はメンバー一人ひとりが強い個人として成長することなのである。相互作用の促進:メンバー間の相互作用を促進するためには、グループの活動を観察していて、適切な行動を見つけて賞賛することである。社会的スキル:協同学習を行うためには、お互いに効果的に活動するために必要なグループ技能や対人的技能を学生に教える必要がある。褒める、支援する、質問する、情報を与える、助けを求める、助けに入る、といった社会的スキルの訓練は目標達成度を高め、グループの関係が積極的な関係構築に変化したことが実証されている1)。グループの改善手続き:グループ学習の最後に行うことは、グループワークを効果的なものにするために、グループがいかにうまく機能したかについてのきちんとした振り返りを行うことである。以上の要素を備えたグループ学習では、学生が学んだ知識や自分の考えをクラスの仲間と伝え合うことを通して相互の理解が深まり、お互いの価値を認識するようになる。特に学力の高い者はメンバーに教えることによって学業成績も自尊心も高まるという成果が得られている2)。近年、個人が予習を行ってから授業へ関心をもって臨み、教室ではグループによる探求活動を行うという教育方略がいくつか紹介されている。日本でも医学部看護学部系の教育に取り入れられているチュートリアル問題解決基盤型学習(Problem-BasedLearning、以下PBL)3)やチーム基盤型学習(Team-BasedLearning,以下TBL)4)、講義映像やオンラインテストなどを自宅で行う反転学習(flippedclassroom)5)、協同学習の様々な技法や考え方を基盤としたLTD話し合い学習法(LearningThroughDiscussion、以下LTD)6)などがある。いずれも知識の応用を教室において対話型で学ぶ授業を重視している。この中でTBLは、「個人学習(予習)」「個人テスト(授業内)」「グループテスト」「チームからのアピール」「教員からのフィードバック」「応用重視の学習活動」の6ステップに分かれており、ステップ2~5に予習や個人の習得状況を授業の中で確認するプロセスがあることが特徴である。これはステップ6の応用課題に取り組むために必要な基礎知識を定着させるためのプロセスである。LTDの目的は、仲間同士の対等な話し合いを通してグループメンバー一人ひとりが学習教材である読書課題の理解を深めることである。学生は読書課題を一人で予習し(個人学習)、教室で仲間とのミーティング(グループ討論)を行う。そのプロセスは8ステップに分かれており、LTD過程プラン(表1)として構造化されている。表1LTD過程プラン(ミーティング用)LTDはもともと大学生を対象として考案されたものであるが、大学生にとどまらず小学生でも主体的な学習や授業の理解を期待して多くの実践研究が行われている。その結果、読書理解が深まり、話し合いを肯―75―中部大学教育研究№14(2014)75-79成人急性期看護学における協同的学び合いを取り入れた事前学習セッションの提案牧野典子・江尻晴美・中山奈津紀

元のページ  ../index.html#85

このブックを見る