中部大学教育研究14
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16.6016.8017.0017.2017.4017.6017.8018.0017.0017.5018.0018.5019.0019.50有意に高かった。しかし統制群にはそのような効果は見られなかった(F(1,700)=0.06,n.s.)。したがって、「自己開拓」を受講することによって受講していない学生よりも時間的展望を高く持つようになったと言える。授業開始時においては、自己開拓受講者と統制群の学生との間で時間的展望に差は見られないが、授業後では自己開拓受講者のほうが統制群よりも時間的展望が高くなっていた。このことは、小塩他(2011)や小塩他(2012)、および佐藤他(2013)で報告された結果と同様である。これらの結果から、「自己開拓」の授業を通じて、学生の時間的展望がより広がることが示された。3.1.4セルフ・コントロールの変化日常生活で観察されるセルフ・コントロール行動の個人差を評価する尺度(RRS)の3つの下位尺度それぞれについて、2要因混合計画の分散分析を行った。まず、改良型セルフ・コントロールについては、交互作用が有意であった(F(1,702)=5.30,p<.05)(図4)。図4改良型セルフ・コントロールの平均値そこで単純主効果検定を行った結果、授業前の受講群と統制群において改良型セルフ・コントロール得点の差は見られなかった(F(1,702)=0.41,n.s.)。つまり改良型セルフ・コントロールの高さは、「自己開拓」を受講する学生とそうでない学生とで授業前には差がないと言える。しかし授業後は差が見られ、「自己開拓」受講学生はそうでない学生と比べて改良型セルフ・コントロールが高くなっていた(F(1,702)=6.42,p<.05)。さらに、受講群における調査時期の効果に有意な差が見られ(F(1,702)=9.70,p<.01)、授業前よりも授業後の方が、改良型セルフ・コントロールが高い傾向が見られた。しかし統制群にはそのような効果は見られなかった(F(1,702)=0.00,n.s.)。したがって、「自己開拓」を受講することによって受講していない学生よりも改良型セルフ・コントロールを高く持つようになったと言える。なお改良型セルフ・コントロールについては、これまでの研究では改良型セルフ・コントロールが「自己開拓」受講によって高まるかについては一貫性が見られなかった。小塩他(2011)では効果が見られたが、小塩他(2012)においては効果が見られず、佐藤他(2013)では弱い効果が見られた。今回小塩他(2011)と同様の結果が見られたことから、今後も改良型セルフ・コントロールに対する「自己開拓」の教育効果について引き続き検討していく必要があると考えられる。外的要因による行動のコントロールについての結果を、図5に示す。分散分析の結果、交互作用は有意ではなかった(F(1,702)=0.54,n.s.)。群の主効果は有意傾向であり、受講群のほうが統制群に比べて、全体的に外的要因による行動のコントロールが高い傾向があったが(F(1,702)=3.20,n.s.)、調査時期の主効果は有意ではなかった;F(1,702)=0.94,n.s.)。したがって、「自己開拓」の受講によって外的要因による行動のコントロールの高さは変わらないと言える。外的要因による行動のコントロールについては、小塩他(2011)では授業前後で統制群の得点上昇が認められ、小塩他(2012)および佐藤他(2013)では主効果、交互作用ともに認められなかった。今回の結果とあわせて考えると、「自己開拓」は外的要因による行動のコントロールに対して明確な効果を持たないことが再び示唆された。図5外的要因による行動のコントロールの平均値調整型セルフ・コントロール(図6)については、有意な交互作用が見られた(F(1,698)=7.98,p<.01)。単純主効果の検定を行ったところ、授業前の受講群と統制群において調整型セルフ・コントロール得点の差は見られなかった(F(1,698)=0.12,n.s.)。つまり改良型セルフ・コントロールの高さは、「自己開拓」を受講する学生とそうでない学生とで授業前には差が―70―佐藤友美・小塩真司・ハラデレック裕子・林芳孝・間宮基文

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