中部大学教育研究14
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52.0053.0054.0055.0056.0057.0058.0059.0064.0066.0068.0070.0072.0074.0076.0078.00つまり、2013年度の自己開拓受講者は、受講していない学生に比べて高かったが、半期がたって受講していない学生が受講した学生と同等にまで自尊心が上がったと言える。ただし、自尊感情が高くなったのは、統制群だけではない(F(1,703)=70.81,p<.01)。受講群による調査時期の単純主効果が有意であり(F(1,703)=18.88,p<.01)、授業前よりも授業後の方が、自尊感情得点が有意に高かった。これまでは、自己開拓受講者の自尊感情は上がるが、受講していない学生の自尊感情は上昇しないことが小塩他(2011)、小塩他(2012)、そして佐藤他(2013)において見出されてきた。しかし本研究の結果は、自尊感情は半期を通じて共通して高くなることが示された。そして2013年度の特徴として、自尊感情が高い学生が「自己開拓」を受講している可能性が示唆された。授業開講から4年目となり、「自己開拓」へのイメージや「自己開拓」を受講する目的が変わってきた可能性がある。例えば、これまでは自尊感情が低いために「自己開拓」を受講して自己に対する自信を高めようという目的であったが、ある程度高い自分に対する自信を、この授業を通して試したいという目的に代わってきている可能性がある。今後、「自己開拓」の受講の目的やイメージについても検討していく必要があるだろう。3.1.2進路選択に対する自己効力の変化進路選択における自己効力について、自己開拓受講者と統制群における、授業前後の平均値を図2に示す。群と調査時期の2要因混合計画の分散分析をおこなったところ、交互作用が有意であった(F(1,688)=16.13,p<.001)。そこで単純主効果の検定を行ったところ、授業前の受講群の方が統制群よりも進路選択に対する自己効力得点の差が有意に低かった(F(1,688)=26.66,p<.001)。つまり、「自己開拓」を受講することにした学生はそうでない学生よりも進路選択に対する自己効力が低かったと言える。しかし授業後は受講群のほうが統制群よりも進路選択に対する自己効力得点の差が有意に高い傾向が見られた(F(1,688)=3.23,p<.10)。つまり、進路選択に対する自己効力が低い学生が「自己開拓」を受講するが、受講後は受講していない学生に比べても進路選択に対する自己効力が高くなる傾向が見られ、「自己開拓」の授業の効果が表れているといえる。また、受講群によって調査時期の効果が有意であり(F(1,688)=28.66,p<.001)、授業後の方が有意に進路選択に対する自己効力得点が高かった。しかし統制群にはそのような効果は見られなかった(F(1,688)=0.05,n.s.)。したがって、進路選択に対する自己効力が低かった学生が「自己開拓」を受講することによって、進路選択に対する自己効力が高まったと言える。過去3年の知見においても、自己開拓受講生の進路選択に対する自己効力の上昇が報告されており、同様の効果が2013年度受講生においても見られたことになる。図2進路選択に対する自己効力の平均値3.1.3時間的展望の変化時間的展望の自己開拓受講群と統制群別の、授業前後の平均値を図3に示す。図3時間的展望の平均値群と調査時期の2要因混合計画の分散分析をおこなったところ、交互作用が有意であった(F(1,700)=7.65,p<.01)。そこで単純主効果検定を行った結果、授業前の受講群と統制群において時間的展望得点の差は見られなかった(F(1,700)=1.18,n.s.)。つまり、時間的展望の高さは「自己開拓」を受講する学生とそうでない学生とで授業前には差がないと言える。しかし授業後は受講群と統制群において差が見られ(F(1,700)=7.54,p<.01)、受講群のほうが統制群に比べて時間的展望が高かった。さらに、受講群における調査時期の効果が有意であり(F(1,700)=12.94,p<.001)、授業前よりも授業後の方が、時間的展望が―69―キャリア教育科目「自己開拓」の効果

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