中部大学教育研究14
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23.0024.0025.0026.0027.0028.0029.0030.0031.00セルフ・コントロール直接的な外的強制力がない場面で、自発的に自己の行動を統制することをセルフ・コントロールと言う。この中には、ストレス場面において発生する情動的・認知的反応の制御を意味する調整型(Redressive)セルフ・コントロールと、習慣的な行動を新しくしてより望ましい行動へと変容していく改良型(Reformative)セルフ・コントロールがある。杉若(1995)は、この2つの下位概念に、セルフ・コントロールとは異なる対処方略を意味する外的要因(External)による行動のコントロールを加えた3つの下位尺度で構成される、日常生活で観察されるセルフ・コントロール行動の個人差を評価する尺度(Redressive-ReformativeSelf-ControlScale,以下RRSと表記)を作成した。今回はこのRRSのうち、先行研究(杉若、1995)の因子分析結果において、各因子に高い因子負荷量を示した5項目ずつ、計15項目を抜き出して使用した。項目例は、「仕事に神経を集中できないときには、小さな目標を立てて少しずつ処理していく」(改良型)、「自分を悩ませる不愉快な思いに打ち勝てないのは、いつものことである」(外的)、「不愉快な思いに悩まされるときには、何か楽しいことを考えるようにしている」(調整型)というものであり、今の自分自身の考え方にどの程度当てはまるかについて「全く当てはまらない(1点)」から「非常によく当てはまる(6点)」までの6段階で回答を求めた。ビッグファイブ・パーソナリティ人間のパーソナリティ(性格)全体を5つの次元から測定するビッグファイブモデルがある。5つの次元とは、神経症傾向(情緒的な不安定さ)、外向性(活発さ、社交性)、開放性(知的な柔軟さ)、協調性(やさしさ、利他性)、勤勉性(まじめさ)の5つである。小塩・阿部・カトローニ(2012)による日本語版TenItemPersonalityInventory(TIPI-J)を使用した。TIPIは10項目で構成されており、「全く違うと思う(1点)」から「強くそう思う(7点)」までの7段階で回答が求められた。各次元は対応する正方向と負方向の項目で構成されており、負方向の項目を逆転処理し合計することで、5つの次元に対応する下位尺度得点を算出する。2.2毎週の授業時に使用した項目毎回の授業時の受講生の意識の状態と変化を測定するために、毎回の授業終了時に授業への振り返りの自由記述とともに、質問項目への回答を求めた。なお、ここでは2010年度とは異なり、次の9つの質問項目に対して「全く当てはまらない(1点)」から「とてもよく当てはまる(5点)」までの5段階で回答を求めた:「1.今回の授業に積極的に参加することができた」「2.今回の授業で理解できていないところがある」「3.授業の中で他の学生から刺激を受けた」「4.毎日の生活が充実している」「5.やる気がおきないことが多い」「6.今の自分に自信をもっている」「7.今の自分に満足できない」「8.将来の目標がはっきりしている」「9.何ごとにもチャレンジしてみたいと思う」。2.3調査手続き・調査対象者自己開拓の受講者に対し、初回の授業でプレテスト、最終回の授業でポストテストを実施した。毎回の授業終了時には9つの質問項目への回答を求めた。「自己開拓」は15週の授業期間のうち前半8週で受講する学生と後半8週で受講する学生にわかれているが、これらの調査は前半、後半で同様に行われた。小塩他(2011)、小塩他(2012)、佐藤他(2013)と同一の手続きにするため、これまでと同様、統制群については、「自己開拓」を受講していない一般教養科目の受講生に対し、自己開拓と同時期にプレテストとポストテストが実施された。調査参加者の内訳は、自己開拓受講群338名、統制群369名のとおりであった。3結果と考察3.1授業前後の変化3.1.1自尊感情の変化自己開拓受講者と統制群における、授業前後の自尊感情得点を図1に示す。群(自己開拓受講者群と統制群)×調査時期(授業前・後)の2要因混合計画の分散分析をおこなったところ、交互作用が有意であった(F(1,703)=6.99,p<.01)。交互作用が有意であったことから単純主効果の検定を行ったところ、授業前において受講者群と統制者群に差が見られ(F(1,703)=25.45,p<.001),受講者群のほうが統制者群よりも高かった。しかし授業後にはその差は見られなかった(F(1,703)=1.09,n.s.)。―68―佐藤友美・小塩真司・ハラデレック裕子・林芳孝・間宮基文図1自尊感情の平均値

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