中部大学教育研究14
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1はじめにわが国では、高齢者大学は、1950年代後半から老人大学として各地で開催され、高齢者の学習の場となってきた。高齢者のニーズとともに学習内容が変容し、近年では、受講後に高齢者自身がリーダとなり、地域に貢献するという「人材づくり」の学習内容が課題とされている1)2)。平成25年版高齢社会白書(以下「高齢社会白書」という)によると、60歳以上の高齢者の学習活動の参加状況は17.4%である。参加していないが、参加してみたいと答えたものは40.2%であった。また、「行ってみたい生涯学習は何か」という質問に対しては、「健康スポーツ」47.5%、「趣味的なもの」44.5%「ボランティア活動のために必要な知識・技術の内容」17.5%と回答していた3)。このようなことから、高齢者の半数は、学習意欲があり、自らの健康や関心を高める学習内容を求め、加えて社会活動をするための技能を希望しているのではないかと考えられる。本学の地(知)の拠点整備事業(以下、COC)の一環である中部大学アクティブアゲインカレッジ(以下、CAAC)の設立趣旨は、リタイア後の高齢者に知的で健康的な生活力を身につけてもらい、本学の建学の精神でもある地域(春日井市)においてあてにされる高齢者リーダとなる人材を養成することである。そこで、本研究は、春日井市在住の高齢者がどのような学習内容を求めているか、また地域の社会的問題やその関心度などを把握し、CAACカリキュラムを作成するための基礎資料を得ることを目的とした。さらに、本学のCOC事業は、大学での地域関連の正課教育を行い、将来地域に貢献できる学生を育てること、併せて、地域の活性化を図ることを目的としている。その正課教育科目として「地域創成メディエーター学入門」(創造・協働・自立の精神を身につけたあてになる人間)の授業を開講する計画である。この科目は、本学学生とCAAC受講生が共に学ぶ学習の場として位置づけている。学生にとって、学習意欲の高いCAAC受講生と一緒に授業を受けることによって、現在地域が抱えている課題を理解する視点を養うことができる実践的な科目ではないかと考えている。本研究結果から「地域創成メディエーター学入門」の内容を含め、CAACカリキュラム内容を検討したので報告する。2調査方法2.1対象者平成26年2月中部大学COC事業地域連携講演会および市民フォーラムに参加した127名を対象として無記名自記式調査を実施した。回収数は126名(回収率99.2%)であった。無回答または年齢、性別の記入漏れのあるものを除外し、118名(有効回答率93.7%)を分析対象とした。2.2調査方法調査用紙は、講演会等会場受付にて参加者に配付し、会場出口に回収箱を設置して回収した。調査項目は、基本属性(年齢、性別、居住地、居住形態)就労の有無、社会活動等の経験資格の有無、介護の資格取得の希望、関心のあるテーマ、学生と一緒に学ぶ希望などについて質問した。写真1講演会会場受付風景2.3分析方法分析には、IBMSPSS(Statistics21)を使用した。CAACの対象者である50歳以上の高齢者を抽出し、各項目を基本属性について単純集計した。また、地域での関心事や学びたいことについては50歳未満と50歳以上の2つに分けて比較検討した。2.4倫理的配慮講演会および市民フォーラム参加者に調査目的や方法などを口頭および書面にて説明した文書を調査用紙―63―中部大学教育研究№14(2014)63-66共育事業による地域に貢献できる人材づくり-COC事業の一環であるCAAC授業科目の検討-藤丸郁代・林上・羽後静子・末田智樹・對馬明

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