中部大学教育研究14
66/110

想や、妊婦が適切なアライメントを維持するにはどうしたらよいか、母子ともに安全に効果的な運動指導をするにはどのようなことに留意したらよいかなど体験して学んだり考えたりしたことが述べられていた。また、ジャケットを着用していない学生もマタニティビクスそのものの運動負荷に、着用した学生のきつそうな様子を重ねることによって、妊婦が運動することについて推察していた。類似した演習内容でも、学生のバックグラウンドや目標が違うと体験して学ぶ内容も違うのだと実感した。さらに、男女によって感想や学びの内容に違う傾向があることも興味深い。例えば、男子学生は妊婦の身体的負担に体験をとおして気づくことで、日常生活の大変さや運動指導の注意点にまで思考を発展させているものが多かった。また、男子は将来の妻や通学時に電車内で見かけたりする妊婦にいたわりの気持ちを示したり、自らを産み育ててくれた母に対する感謝を示した者も多かった。一方、女子学生は自らも将来妊婦になる可能性があるためか、自分も妊娠したら運動したい、パートナーの協力を得たいといった希望や、本当におなかに胎児がいるような感覚になり気を遣った、妊娠中の体調管理やリラックス効果がありそうだというように、将来の自分に置き換えて妊婦をイメージし、より情緒的な部分での気づきがみられたのが特徴であった。妊産婦への運動指導は、生まれてくる子どもの健康の保持増進や、育児を終えた後の更年期、老年期という女性の長いライフサイクルにおける運動意識にもつながる。実際、妊娠期に運動を始めたことを機に運動を継続する人も多く、強く動機づけされた妊娠期に適切な、かつ心地よい運動指導を受けることは、大変重要である。また、本時の学びによって、次世代を産み育む担い手である若い学生に、運動指導だけでなく自身のライフサイクルにおいても何らかの良い影響をもたらすのではないかと期待する。わずか30分間ずつではあったが、このような体験学習の成果が得られたことは大変意義があり、学科を越えた教員間でのコラボレーションの可能性も拡がった。今後の課題として、今回は時間の都合で妊婦に対するメディカルチェックや緊急時の対応について詳しく説明できなかったため、母子の安全性をいかに保証するか、また、基本的知識として妊婦の心身の変化や特徴をどの程度理解させたうえで本時に連動させるか、等があげられる。こうした課題をクリアすることによって、学習効果がさらに増すのではないかと考える。参考文献1)田中泰博:周産期運動療法の実際、メヂィカ出版、19942)日本マタニティフィットネス協会:妊娠中のママのためのメニューマタニティビクスhttp://www.j-m-f-a.jp/mama/fitness/pregnant/maternitybics[2014/09/01アクセス]―56―横手直美・藤丸郁代・西垣景太・西村貴士・浦井久子准教授生命健康科学部保健看護学科横手直美准教授生命健康科学部スポーツ保健医療学科藤丸郁代講師生命健康科学部スポーツ保健医療学科西垣景太助手生命健康科学部スポーツ保健医療学科西村貴士助手生命健康科学部スポーツ保健医療学科浦井久子

元のページ  ../index.html#66

このブックを見る