中部大学教育研究14
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3.3演習記録の感想からマタニティビクスを体験した感想について、多くの学生が驚きや新鮮な気づきを記述した。そこで、男子と女子、妊婦体験ジャケットの着用の有無による違いに着目して、その一部を原文のまま紹介する。<ジャケット着用ありの男子>・初めは立っているだけで、それほど重い、とは感じなかったが、マタニティビクスをして動いているうちに、足首や膝・腰が少しずつ負担がかかってくるのが分かった。たった数10分もしないうちにあそこまで体力を使ったことを考えると、妊婦さんは大変だろうな、と思う気持ちと、さらに運動しなければいけなく、家で寝ているだけではいけないので、想像がつかないくらい大変だと思う。・妊婦は大変そうだなと思っていたが、実際に妊婦体験ジャケットを着用し、マタニティビクスを体験してみて想像以上に重さを感じました。何もしていないのに勝手に体が後ろに反ってしまいました。日常生活を過ごすだけでしんどくなってしまい、身体活動が減ってしまうのでマタニティビクスで楽しく体を動かすことは気分もリフレッシュでき、妊婦にも胎児にも健康の維持・増進につながると感じました。また妊婦だけでなく付きそいの夫も参加することで、改めて妊婦を気遣うことにもつながると思いました。・自分は将来妊婦になる事は無いが、自分が結婚し、奥さんになった女性が妊婦になった時の気持ちが少しでも理解してあげられると思った。全身の体重は普段生活していく上で、とても重く、電車・階段・普段の家での家事など、今あたり前のように出来ている事がつらい事だということが理解できた。自分の母親は、このような体験をして自分を産んでくれたのだと思い、感謝しようとも思った。<ジャケット着用ありの女子>・お腹の重さが腰と肩にきた。腰は前に出てしまいそうになり、肩では肩を丸めるような姿勢になってしまった。これでは腰痛などになるので、背筋が伸びる姿勢をとってみたが長時間キープは大変だと思った。電車などに優先席があるのはこのような理由のためなんだと思った。また、お父さん役の手を借りたくなるのも分かった。・先生の言っていた通りお腹が重たいのでどうしても腰がそってしまう。またマタニティビクスで体を動かすときは主に下肢への負担が大きく、あの短時間でお尻・太ももが痛くなった。あとは肩が非常に重く手を上に上げるときがつらかった。また運動による刺激・圧迫がお腹の中の子どもを苦しませないようにと自分のことだけでなく、お腹に気を使ってエクササイズした。<ジャケット着用なしの男子>・着用しているパートナーを見て、重そう・動きにくそうという印象を感じた。正直、もっとゆっくり動くのかと思っていたが、思っていた以上に激しい動きをしたので、こんなに動いていいのかと感じたが、説明を聞きながら、動いていると全く動いていないよりもはるかにいいと思った。今回は足腰が強い男性が多かったが、本当の女性だったら、体重が8kgも増えたら、つらいことが理解できた。<ジャケット着用なしの女子>・そのままでもけっこうきつく感じた。エアロビクスは他の講義でもやりましたが、妊婦対象となると胎児に悪影響が出ないように、母親への負担が無いように内容を考えるべきだと感じた。・音楽に合わせながら運動を行うことで楽しみながら実施できると思った。妊婦特有の悩みを改善できるような動きを取り入れていくことにより、順調で快適な妊娠経過が出来ると思った。多くの人数で一緒に実施することにより、安心感も得られるのではないかと思った。心身のリラックスにより、出産への準備へとつながると思った。4考察本時のねらいには、妊婦運動の目的や運動指導の留意点を自らの体験をとおして学習するということがあった。授業中の学生の反応と演習記録の内容から、この目標はほぼ達成されたと考える。当日は2グループ編成で演習内容によって場所移動もあり、学生としても忙しいスケジュールであったと思われるが、彼らが本時の目標を理解し、互いに協力して取り組んだことによって、学生も教員も楽しんで授業ができたことによる学習効果が大きいと思われる。妊婦体験およびマタニティビクスの模擬指導を行った教員は保健看護学科の専任教員で、スポーツ保健医療学科においては初めて指導を行った。保健看護学科の3年次では、妊婦健康診査や妊婦の生活指導を行う目的で妊婦体験ジャケットを着用して演習を行う。このときも様々な感想や気づきがあるが、ここで重視されるのは、体験することで妊婦にどのような体の負担や動作の制限があるか、おなかに胎児がいる、あるいはもうすぐ分娩を控えた妊婦の気持ちをイメージし、どう看護につなげていくかである。スポーツ保健医療学科の学生は、既習の解剖学や運動機能と関連づけて、筋肉や関節の動きに着目した感―55―運動指導者を目指す学生に対するマタニティビクスの模擬指導

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