中部大学教育研究14
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項を示した。また有酸素運動だけでなく、分娩体位のコツともいえる姿勢の取り方や産後の乳汁分泌促進のためのエクササイズについても指導した。これらを妊婦になりきって体感することで、運動強度の確認方法やおなかのはりに対する注意などを意識づけることができると考えたためである。さらに、参加した学生全員が妊婦同様に楽しめるようにユーモアを交え、担当教員らもエクササイズに参加して、「妊婦」の運動のモチベーションが上がるように支持的声かけを行った。ただし、学生が運動指導の専門家になることを前提として、動かしている筋肉や関節部位の名称などは専門用語で説明した。3結果3.1妊婦体験ジャケット着用時の学生の反応妊婦体験ジャケットの着用を促すと、「ええー!?これ着るの?」と照れる学生、「うわっ、でかい!」と率直な感想を述べる学生たちで一瞬にしてにぎやかになった。興味本位で大きなおなかをトントン叩いてみたりする学生もいた。そのような学生には、「中に赤ちゃんがいるんだよ。大事にしよう」と注意した。一方、男子学生であっても、始めから大事そうにおなかを抱えながら着用する者もいた(図1)。妊婦は胎児の発育に伴って腹部が増大することにより重心が前方に移動するため、自然にそれをかばうために脊柱を後方に反るような姿勢になり、それゆえ腰背部痛が生じやすい。そのことを説明すると、「ほんとだ!体が前にいく」「ああ、もう腰が痛い」と多くの学生がすぐに体感できたようだった。また、妊婦は大きな腹部によって足元が見えにくく、バランスも崩しやすいことから転倒リスクも高い。そこで、運動前に靴ひもをしっかりと結んであるか、実施場所に転倒を招くような障害物はないかなど、運動指導者は妊婦の安全面に十分配慮する必要がある。そのことを伝えると、「ほんとだ、危ないなあ」と早速自身の靴ひもを結び直したり、長いジャージの裾をまくりあげたりするなど、適切な行動の変容がみられた。3.2模擬指導時の学生の反応授業前は、スポーツが得意で体力もある学生ばかりだろうから、15分くらいでは汗もかかないだろうと思っていたが、意外にも「きつい」という声が多く聞かれ、真面目に取り組む姿が見られた。足の動きに手の動きが加わると、とてもリズムよくとはいかない学生もいたが、体験学習を楽しんでいたようだった(図2)。エアロビクス経験のある学生はさすがに素晴らしい動きで、ムードメーカーとなって場を盛り上げ、質問もしていた。産後の乳汁分泌促進のために行う乳腺刺激(図3)では、学生は恥ずかしそうにしながらもインストラクターの指示するように乳腺位置を確かめたりしていた。終了時、「まだまだ動き足りないかな?」と聞くと、苦笑しながら「いやあ、もういいです」「すごい汗かきました」といった感想があった。図1妊婦体験ジャケットを着用する学生たち図2Vステップに手の動きが加わって混乱気味?図3クールダウンを兼ねて乳腺刺激のエクササイズ―54―横手直美・藤丸郁代・西垣景太・西村貴士・浦井久子

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