中部大学教育研究14
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3.5評価方法本シミュレーション教育の評価の主体は学生自身に置き、学生が学内実習目標達成の自己評価表を記入した。学内実習終了時点で、目標1~5の小目標(計18項目)の到達状況について、4.できた~1.できなかったの4段階リッカートスケールで記入した。教員はファシリテーターとして、デブリーフィング時にグループにおける目標到達状況や学生の実践の妥当性を伝え、学生が課題に対し前向きに取り組めるように環境を整えた。今回シミュレーション教育を導入した経緯として、安心のある学習環境の中での経験をとおして、学習者自身が課題を発見し解決に必要な知識や技術を実感することで、学習が動機づけられ、続く臨地実習に対する心理的適応も促されることを期待した。また、本シミュレーション教育の効果を測定する方法として、一つは主体的な学習の前提状況となる自己効力感(自分はできる、やれているといった感情)の側面で評価することとした。もう一つは、学生と共にシミュレーション教育を創っていくことを目指し、「役に立ったこと」「役に立たなかったこと」の自由記述にて評価した。シミュレーション教育の効果については、別の機会に改めて報告する予定である。4今後の課題今回、ティーチングからラーニングへの変換をめざし、小児看護学臨地実習前の学内実習にシミュレーション教育を導入した。シミュレーション教育の効果を量的・質的の両側面から評価し、改善していくことが今後の課題であるが、本教育に携わった教員は、これまでは受動的であった学生が、学内実習に真剣に取り組み、能動的に知識・技術を習得しようとする学生の変化から、教育の面白さを実感している。シミュレーション教育は学生と共に創るものであり、今後も学生の意見を積極的に取り入れながら改善を目指していきたい。シミュレーション教育を行うにあたっては、費用やマンパワーの課題があるが、今ある環境(設備・機器・マンパワー)の創意工夫で改善できることも多くある。また、シミュレーション教育を実施するには、指導者(教員)のスキル向上が必須となるので、定期的に開催される指導者養成講習会などに参加できる機会を整えていきたいと思う。また、臨地実習のなかにシミュレーション教育をどのくらいの割合で入れていくのかということが検討課題となる。米国におけるNationalSimulationStudyResultsinaNutshell(全国シミュレーション結果)では、臨地実習の総時間の25%および50%をシミュレーションに置き換えた場合に教育成果(知識、臨床能力、批判的思考、実践の受容可能性)に影響が及ぶかを調査しており、看護プログラムの終了時に評価された教育成果には有意差はないと示されていた5)。この結果を日本の看護基礎教育にも適応するにはいくつかの考慮が必要だが、臨地実習という緊張感の高い環境(脅威の中)でなく、失敗が許される安心した環境において看護実践能力を養うことのできるシミュレーション教育は有用であると考える。謝辞本稿を執筆するにあたり、本授業に主体的かつ熱心に参画してくれた本学科3~4年生に感謝する。参考文献1)増野園惠(2010)看護基礎教育におけるシミュレーション教育の展望,近大姫路大学看護学部紀要,第3号、1-7.2)矢野章永編(2012)看護学教育臨地実習実践ガイド、医歯薬出版株式会社、東京.3)阿部幸恵(2013a)看護のためのシミュレーション教育はじめの一歩ワークブック、日本看護協会出版会、東京.4)阿部幸恵(2013b)臨床実践力を育てる!看護のためのシミュレーション教育、医学書院、東京.5)JenniferK.Hayden,RichardA.Smiley,MaryannAlexander,etal.(2014)TheNCSBNNationalSimulationStudy:ALongitudinal,Randomized,ControlledStudyReplacingClinicalHourswithSimulationinPrelicensureNursingEducation,JOURNALOFNURSINGREGULATION,5(2),S1-S64.―51―小児看護学臨地実習におけるシミュレーション教育の導入准教授生命健康科学部保健看護学科山田知子講師生命健康科学部保健看護学科石井真助教看護実習センター畑中めぐみ助教看護実習センター大村政生助手看護実習センター清水いづみ講師日本赤十字豊田看護大学山田恵子

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