中部大学教育研究14
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ことで、学生の印象に残し、理解を促すことが重要である。学生の略語のイメージ化をはかるために、教員は略す前の単語に戻って説明することも必要である。また、自分の考えをアウトプットすることで知識の定着につながることから、授業時間内には教員が一方的に講義をして学生は講義を聴くだけという授業形態にとどまることなく、学生の認識や知識を表現させる時間と機会を与えることも重要である。3年次秋学期からは、急性Ⅰの授業を基盤とした成人急性期看護学臨地実習が開始になる。授業を直接担当していない実習指導の教員にも学生の傾向を伝えるなど、教員間の情報共有を行い、臨地実習においては講義資料を活用させて見学や経験の機会を積極的に与えることで、急性Ⅰで学習した内容を再現させることも学生の理解を促すことに有益ではないかと考える。現在、高等学校の生徒の国語では漢字を読み、書く力が十分に身についておらず、思考力・判断力・表現力など知識を活用する力と共に基礎的・基本的な知識や技能の定着が重要であるとされており4)大学入学以前からの問題が、本学科でも顕著化しているともいえる。荒川らは、高等学校において基礎・基本が定着しない理由として、単調で機械的な繰り返しの学習活動が多いこと、覚えた知識を再現する機会が少ないこと、学習した内容を他の単元やほかの教科等で振り返る場面が少ないこと、自宅学習の習慣が身についていないこと、を明らかにしている。そして、基礎・基本の定着を図るための方策としては、ペアワークやグループワーク等授業形態の工夫や、基礎・基本の活用する学習活動が提案されている4)。ペアワークやグループワークの学習活動の方法も考慮する必要があることから、安永らの提案するLTD(LearningthroughDiscussion)話し合い学習法5)も有用かもしれない。LTD話し合い学習法は学生の読む力、考える力、話す力を育てる学習モデルで、記憶中心の学習ではなく、他の知識や自己との関連付けを通して理解を深める学習方法である。ここでは、各自が予習を行ったうえで、仲間との話し合いを通じて学習課題の理解を深めることが狙いとされている。看護系大学では、学士としての看護専門職者を育成する義務がある。高齢化が進み医療が発展する中で、急性Ⅰの内容は、現在の医療現場で行われている治療内容や必要不可欠な看護が含まれている。国家試験における出題頻度も高い。学生は急性Ⅰを基盤として、より複雑でより難解な知識と技術を身につけていく。そのため、急性Ⅰにおける学生の知識の定着は、必須である。教員は“教えたい”ばかりに目が向き、詰め込み式の講義になってしまいがちであるが、前述の学生の傾向をふまえた講義内容や授業形態の改善の必要性が示唆された。また、講義を担当する教員間の情報共有だけでなく、科目を超えた情報交換、授業内容の改善や検討も必要と考える。6既習の知識の定着に向けて今回の結果から、すでに既習したと考える用語がわからない用語として多く挙げられていたことが明らかになった。このことから、既習の知識が定着していないと考えられる。また、学生は略語や漢字の並ぶ看護・医療用語、カタカナの並ぶ用語についてわからないと感じる傾向であった。以上のことから、今後の急性Ⅰの講義においては、・事前課題では、既習科目や急性Ⅰで使用するテキストを用いた内容の工夫・講義では、前回までの講義内容や用語を想起できるような導入や振り返り・特に略語や漢字が並ぶ用語については、学生にイメージしやすいような説明と動画・資料の工夫・学生が認識や知識を表現することで共有したり、さらなる疑問や理解の深まりを促すことができるような授業形態の工夫・担当講義や科目を超えた教員間の情報交換の充実などの取り組みの必要性が示唆された。文献1)大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/40/toushin/1302921.htm2)吉澤千登勢、白鳥孝子、真下綾子他(2013).看護系大学の専任教員がとらえた「学士力」について.日本看護学教育学会誌.23(1).11-19.3)林美奈子、小薬祐子、関根龍子他(2013).看護教育における解剖学・生理学の教育に関する研究第1報.日本看護学教育学会誌.22(3).23-31.4)荒川憲行、山本城(2011).高等学校における基礎・基本の定着を図るための指導に関する研究.神奈川県立総合教育センター研究集録30.21-28.5)安永悟.LTD話し合い学習法.実践・LTD話し合い学習法.12-22.ナカニシヤ出版.2012.京都.講師生命健康科学部保健看護学科江尻晴美助教生命健康科学部保健看護学科中山奈津紀教授生命健康科学部保健看護学科牧野典子―44―江尻晴美・中山奈津紀・牧野典子

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