中部大学教育研究14
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1はじめに看護基礎教育は、看護学の専門的知識・技術を習得し、看護専門職の受験資格を得るための教育である。文部科学省の“大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会”では、学士課程における看護系人材養成について、専門職として能力開発に努め、あらゆる健康レベルの利用者のニーズに対応し、保健、医療、福祉等に貢献できる応用力のある国際性豊かな人材養成を目指す。そして、看護を取り巻く幅広い知識体系を学び、自己理解や創造的思考力育成のための教養教育を前提に、健康の保持増進・疾病予防を含めた看護師等の基礎となる教育を充実していく必要が述べられている1)。これらを受けて中部大学保健看護学科では、基礎教育科目の中で成人期の人々を対象とした、生命の危機状況並びに疾病の急性期にある人への救命及び治療過程における援助方法を習得する成人急性期看護学Ⅰ(以下、急性Ⅰ)を必修科目として設定している。2014年度春学期は、担当教員が分担して講義を行ってきたが、学生の反応から講義内容の理解が不十分ではないかと感じていた。担当教員は以前より、本学が魅力ある授業づくりの取り組みとして行っている、授業時間中に受講生がスマートフォン等から回答してその集計結果をリアルタイムで閲覧できるクリッカー:Cumoc(キューモ:ChubuUniversityMobileClicker)を使用している。Cumocを使用した急性Ⅰの授業時間内での学生のアンケートで予習を行っているか、復習を行っているかを聞いた結果、学生の半数は予習や復習を行っていないと回答していた。このことから、講義内容の理解が不十分である要因の一つに、学生は予習・復習の習慣がない傾向にあり、既習の知識が定着していないことが窺われた。そこで、2014年度急性Ⅰの講義では、予習を定着させ、講義内容の理解を促す一つの手段として“わからない用語調べ”を事前学習課題(以下、事前課題)として学生に課した。“わからない用語調べ”は当初、担当教員が他の講義科目で考案したものである。学生が授業中に既に学習したはずなのに忘れている用語を指定の用紙に書き出して、復習することを目的とした。看護に限らず医療の世界には様々な専門用語が存在する。学生はその用語を一つ一つ理解しなければ、講義内容を理解することは難しい。学生は入学当初から、様々な講義を通して、専門用語を理解するための努力を重ねている。しかし、次々と行われる講義の中で、一つ一つの用語を自らが説明できるまでに学習を深めているとは考えにくい。そこでまずは、わからない用語と理解できる用語を区別することが、講義内容を理解する第一歩となると考えた。また、事前課題として課すことで、その用語が初めて学ぶわからない用語なのか、既習の講義内容で、すでに学習されていた用語なのか、またそれはどの既習科目でどのように学習した用語なのかの復習のきっかけになるとともに、予習を行うことにより講義内容の理解が深まるのではないかと考えた。本論文は、急性Ⅰの第9回から第11回の講義の事前課題において、学生の記述した“わからない用語”を分析して学生の傾向や授業方法における今後の課題を見出すことを目的とした。2授業概要本学科における急性Ⅰは、カリキュラムの中では学科専門科目に位置付けられる。成人期(主に18歳から64歳)にある人々を対象とした看護介入科目であり、生命の危機状況並びに疾病により全身状態が急激に変化する状況にある人々への救命及び治療過程における援助方法を習得する(資料1)。本学科2年次生が春学期に履修をする必修科目で、実習を含んだ30時間2単位の科目である。全12回にわたり講義及び実習を行い、3回のグループワークを経て単位認定試験となる(資料2)。2014年度は93名が受講をした。講義資料については、ライブラリ機能を利用して授業の約5日前に次回の講義資料としてパワーポイントの配布資料をウェブ上にアップしている。講義資料をアップした際は学生に通知を行っており、担当教員が各回で必要と考える事前課題及びその他の資料を講義資料と共にアップしている。―39―中部大学教育研究№14(2014)39-44成人急性期看護学Ⅰにおける看護学生の学習傾向と課題-事前学習課題“わからない用語調べ”より-江尻晴美・中山奈津紀・牧野典子

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