中部大学教育研究14
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1はじめに「視聴覚教材」という用語や理論構成が現れたのは、1930年代以降のアメリカにおいてである。アメリカの教育工学者エドガー・デールは、言葉による教育効果をより高めるために非言語教材が利用されるべきであると考えた。1658年にコメニウスによって著された絵入り教科書「世界図絵」は、今日の視聴覚教材の先駆である1)。看護技術教育におけるビデオ学習の研究は、1990年代から行われており、最初の論文は「基礎看護技術のビデオ作りに挑戦して」2)であった。2000年代に入ると、e-learningなどオンデマンド教材や、DVD活用による自己学習システムの開発といった研究活動が広がりを見せている3)~9)。教育機関ごとに作成された独自のビデオが技術習得に有効であると報告されているが、その一方で問題点も報告されている2),10)~14)。本学における基礎看護技術の教育においても、過去VHSやDVDを媒体とした視聴覚教材を教員が自ら制作していたが、大池ら9)や長谷川ら2)が指摘しているような照明や音声に関して問題を抱えていた。一方、視聴覚教材の活用については、「自宅でも使える教材の必要性」3)「インターネットが使用できない環境の学生の存在」6)「ビデオを見ながらメモを取ったり考えたりすることが難しい」15)などの課題も報告されている。学生が自宅等でビデオ学習出来る環境を整える必要がある。本学の基礎看護技術における視聴覚教材を用いたビデオ学習は、教員側から視聴覚教材を提示する一方向の活用にとどまっており、学生による視聴覚教材の評価は行われていなかった。そこで本研究では、学内実習後、技術試験実施後に学生が視聴覚教材に求める内容やビデオ学習の状況を明らかにすることを目的として調査を行った。学生の評価内容を踏まえて、魅力ある授業づくりを目指し、視聴覚教材を含む授業の振り返りをすることは、学生の看護技術習得に対して有効であると考える。2研究目的視聴覚教材の学生評価をとおして、学生が学習段階によって視聴覚教材に求める内容およびビデオ学習の状況を明らかにする。3研究方法3.1本学のビデオ学習環境の現状調査視聴覚教材を用いたビデオ学習の前提となる視聴環境等に関して、本学での現状をまとめる。3.2視聴覚教材の学生評価の調査学生評価の対象2013年度「治療支援技術実習」履修生学生評価の項目以下の項目について調査を実施する。①2013年度「治療支援技術実習」注射法・採血法ビデオの視聴方法②学内実習前後(講義日~学内実習後1週間)の視聴回数と、学生が感じたビデオ学習の学内実習に対する効果③ビデオの内容に対する学生の評価データ収集方法中部大学アンケートシステム「CumocL」を活用し、匿名回答アンケート調査により収集する。今回活用したCumocLは、大学教育研究センターのアンケート調査システムである。回答者はインターネットに繋がる環境であれば、いつでもどこからでも回答をすることが可能である。実施できるアンケートの仕様は、一設問に対して一つの回答を選択する形式(最大10設問で回答肢は10個まで)と自由記述がある。システム的にアンケートへの回答が匿名化されており、個人情報保護が保証されている。また、結果の単純集計を出力することができ、集計結果を回答期間終了後に回答者に公表することや、アンケートの実施者から回答者に対してコメントを発信することができる。アンケートの実施者は、設問単位の集計結果をCSV形式でダウンロードすることも可能である(大学教育研究センター資料抜粋)。学生は、同様のシステムを授業評価アンケートで活用しているため、使用方法について改めて説明を要しないという利点もある。データ分析方法CumocLによるアンケート結果に対し、記述統計を行い、自由記述欄に記載される意見・要望などについては、内容を分類整理する。―21―中部大学教育研究№14(2014)21-24基礎看護技術のビデオ学習の実態調査と学生評価上田ゆみ子・宮内義明・堀文子

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