中部大学教育研究14
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巻頭言手作りの教育開拓を目指してここ20年来、大学教育の在り方や教育改革については、一般論から個別論まで、また、専門的な立場からと素人的な興味から多様な心配、意見や提案さらには政府諮問機関からの答申が頻繁に出され、百家争鳴、収拾困難な状況を作り出していると感じています。とは言え、これらの心配や提言に通底している基本的な視点や認識は、大学教育に関するパラダイムを大転換せよとの告発として受け止められます。教育(ティーチング)の質の向上から学習(ラーニング)の質の向上への転換であり、学生が主体的で自律的な行動主として成長し発達することを支援し援助するための教育体制を開発し整備することであります。ここではあくまでも学生個々人が、個性的に成長し発達し成熟することを目指した教育活動を基本にし、その結果として集団が成長し発展することに結び付けることが求められています。平均値の向上だけではなく、落ちこぼれを許すことなくすべての構成員の向上に視点を置く教育活動評価の重視と言えます。多様な個性を持つ個人の成長・発達を丁寧に促すためには、従来型の画一的な効率重視の教育論では対応できず、多様で弾力的な現場対応の教育技の開拓が求められています。その教育実践は、美しい理論で武装されたもの以上、実践によって確かめられた経験知や暗黙知に支えられたもので、一般性や汎用性を担保するものでなくてもよいでしょう。この教育実践研究には現場の具体的な問題や課題に注目し、問題・課題として設定し、個別事象についての調査分析し、より妥当な解を求めると言う事例研究から始めなければならないでしょう。この地道な現場検証を疎かにすると、その研究結果は所期の研究目的に応えることにならず、研究心は満足されないでしょう。かつて、農学の分野では、「農学栄えて、農業滅ぶ」と揶揄されていました。「教育学栄えて、教育業滅ぶ」は避けなければなりません。このような観点から今回の中部大学教育研究第14号は、個別科目の授業改善を図る目的を持っての調査研究の成果を掲載しました。一般的な学説の提案に至る過程として、現場の具体的な現象を研究の対象に持ち上げ、そこから現場が必要としている問題・課題の解決の一助にしようと言う立場です。現場立脚型の研究の断章として参考に供します。本号の企画、編集を担当された坪井和男中部大学学監・大学教育研究センター長はじめ関係者の皆様に対して感謝いたします。2014年12月学長山下興亜

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