中部大学教育研究14
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1はじめに今日の保険医療は医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師など各種の専門技術を持つ人々の総合力によって、その成果を上げている。その一員となるべく、1987年6月2日法律60号として臨床工学技士法が公布され、翌年の1988年11月に第一回臨床工学技士国家試験が実施、世界で初めて臨床工学技士の国家資格制度が誕生した。臨床工学技士資格を取得するためには、臨床工学技士養成校で受験資格を取得し、国家資格試験に合格しなければならない。現在の養成校の数は、専門学校32校、短期大学2校、大学32校、大学院6校で、臨床工学技士資格取得者は35,000人余りを数えるまでになった。臨床工学技士(CE)は急速な医学・医療の進歩、疾病構造の変化に伴い、医療機器は急激に進歩・多様化しており、高度化する医療を支える医療専門職の一員として、無くてはならない職種になりつつあり、学校教育の重要性が高まってきた。しかし、各医療機関での臨床工学技士の業務内容に違いがある。また、養成校は国家試験出題基準を網羅した講義にしているが各養成校独自の講義内容になっている。そこで、各医療機関の高度先進医療の担い手であり専門職である臨床工学技士CE(国家資格)を、社会に貢献し得る人材として育成するにはどうすればよいか。そのためには、医療専門職教育の内容や専門職として求められる基本姿勢・態度すなわち資質を入職前に身につけさせる教育・訓練(プレサービス)の充実が不可欠である。そこで、卒後1年を経過した卒業生に聞き取り調査による質的研究を行った。質的研究は、現在では保健学領域全般でその必要性が言われるようになってきている。本研究は、アンケート調査に代表される量的研究とは違い、個々の事例から生の言葉や行動をデータ化し研究する質的研究である。2目的臨床工学技士を養成するに当たり、問題探索型の質的研究を行い、1年間臨床経験を積んだ卒業生に対し学生時代の教育における問題点の探求、入職直後の様子を知る目的で、聞き取り分析を行い学生時代の教育における問題点を探求する。3対象2008年3月に卒業し臨床で1年間以上継続して働いた、臨床工学技士10名を対象とした。10例のうち7例は総合病院、1例は病院、2例は透析クリニックに勤務。4方法個別に面接を行い、その内容を録音しそれを文章化する。面接は、半構造化形式で行い、聞き手と対象者の座る位置などを考慮し、聞き手の誘導にならないよう注意して実施した。面接時間は、45~60分程度とし、面接内容は、①職場の状況、②職場での経過と感想、③学生時代を振り返って臨床実習のこと、④今から思えば講義、実習で必要だと思うこと、以上の4点とした。質的な社会調査の手法には、グラウンデッド・セオリー・アプローチやデータマイニング法、KJ法などあるが、今研究は、グラウンデッド・セオリー・アプローチ1)を用いて分析を行った。グラウンデッド・セオリーは、インタビューや観察などによって得られた具体的なデータをもとに、そのデータを圧縮し理論を発見すること、あるいは既存理論の精緻化を目指す方法である。なお、被験者へは研究内容の説明を行い、面接にて録音をすることや面接で得られた情報の取り扱いは、氏名等を明らかにせず、個人の秘密が十分に守られることを条件に、本評価の成果を医学雑誌や学会発表あるいは医学教育の目的で使用する承諾を得た。本研究は中部大学倫理審査委員会の承認を得て実施した。5手順研究者により様々な方法2)があるが、私たちが行ったグラウンデッド・セオリー・アプローチの具体的な手順を図1に示す。図1グラウンデッド・セオリーの手順―9―中部大学教育研究№14(2014)9-14臨床工学技士の人材育成における質的研究-臨床工学技士新卒者の調査-福田信吾・武田明・米澤久幸宮本靖義・矢澤浩成・藤部百代

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