中部大学教育研究14
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が低下し、いわゆる自己の現実を知る機会になったと考える。今回、シミュレーション教育の効果を自己効力感を高めるという視点で検討したが、教育効果を測定する方法は様々であり、今回の結果により効果的であったとは一概にはいえない。特に、自己効力感が低下した学生に対して、適切にフォローしていくことは、シミュレーション教育の効果を強化するための今後の課題である。6.3研究の限界本研究では、シミュレーション教育が学内実習の実施前後での自己効力感の変化をみていった。しかし、シミュレーション教育が自己効力感のどの因子に強く影響するかは分からなかった。今後、シミュレーション教育が自己効力感のどの因子に強く影響するかをみていくことで、さらにどこを強化した教育を実施するかが明確になると考える。また、自己効力感を高めた学生が実際の患児や家族と接する臨床場面において、どのような実習をしたかという縦断的調査は行っていない。特に、学内実習前に自己効力感の高い学生の多くは自己効力感を低下させており、その学生がどのような実習を展開し、どのようなことを困難に感じていたかを確認していく必要がある。さらに臨地実習の客観的評価として、教員の評価と比較することで、学生の主観的なレディネスと客観的なレディネスを統合することができると考える。7結論本研究は、小児看護学臨地実習を履修する3~4年生を対象として臨地実習前に学習者主体のシミュレーション教育を導入し、その効果を学内実習目標達成の自己評価、およびシミュレーション教育前後での自己効力感の変化の二つの側面において検討した。結果として、学内実習目標達成の自己評価はほとんど項目で多くの学生が目標を達成したと評価をしていた。シミュレーション教育における自己効力感はシミュレーション教育前よりシミュレーション教育後に総得点、各因子及び総評全てで上昇した。また、学内実習前の自己評価の高得点群と低得点群で比較すると、高得点群は「因子C.対象の理解と援助」の項目で有意に低下した。また、低得点群は総得点および「因子A.基礎知識の理解」「因子B.コミュニケーション技術」「因子C.対象の理解と援助」「因子F.学習者-教員間の関係性の構築」の項目で有意に上昇した。この結果より、シミュレーション教育は小児看護臨地実習の自己効力感を高めることに効果があると考える。本研究は平成25年度特別研究費(CP)教育研究の助成(採択課題番号25IM04CP)を受けて実施した。謝辞本研究の調査にご協力いただきました学生の皆様に深謝いたします。参考文献1)増野園惠(2010):看護基礎教育におけるシミュレーション教育の展望、近大姫路大学看護学部紀要、第3号、1-7.2)小西美和子他(2010):看護基礎教育におけるフルスキルシミュレーション学習の試み-手術直後の観察場面におけるシナリオ作成とそのプロセス-、近大姫路大学看護学部紀要、第3号、99-104.3)VictoriaL.Elfrink,etal.(2009):TheCaseforGroupPlanninginHumanPatientSimulation,NursingEducationPerspectives,30(2),83-86.4)VictoriaL.Elfrink,etal.(2010):UsingLearningOutcomestoInformTeachingPracticesinHumanPatientSimulation,NursingEducationPerspectives,31(2),97-100.5)中村隆一郎(2011):看護基礎教育・医学基礎教育におけるシミュレーション教育の役割-メーカからの提言、医機学、81(3)、34-41.6)西田みゆき他(2003):小児看護学実習における学生の困難感、順天堂医療短期大学紀要、第14号、44-52.7)園田麻利子他(2011):実習前演習の評価、鹿児島純心女子大学看護栄養学部紀要、15、29-42.8)真鍋えみ子他(2007):看護学生の臨地実習自己効力感尺度の開発とその信頼性・妥当性の検討、日本看護研究学会雑誌、30(2)、43-53.9)バンデューラ編、本明寛他監訳(1997):激動の中の自己効力感、金子書房、東京.10)近藤敬子(1999):看護教育技術としてのartを目指して、QualityNursing、5(7)、492-495.11)成田健一他(1995):特性的自己効力感尺度の検討、教育心理学研究、43(3)、306-314.助教看護実習センター大村政生准教授生命健康科学部保健看護学科山田知子講師生命健康科学部保健看護学科石井真助手看護実習センター清水いづみ助教看護実習センター畑中めぐみ講師日本赤十字豊田看護大学山田恵子―8―大村政生・山田知子・石井真・清水いづみ・畑中めぐみ・山田恵子

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