中部大学教育研究14
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6考察6.1学内実習目標達成の自己評価という観点からみたシミュレーション教育の効果学内実習目標達成の自己評価(形成的評価)では、多くの項目において高い自己評価が示された。つまり、大目標で結果を捉えた場合に、多くの目標が2日間の学内実習で目標達成できたといえる。このシミュレーション教育では、それぞれの目標達成に向けたプロセスを学生は主体的に踏んでおり、その中で多くの大目標が達成できたことは大きな効果であったと考える。しかし、「患児の状態をアセスメントすることができる」という目標は、他の大目標と比べて自己評価が低く、10%を超える学生が低い自己評価をしている。この目標は、バイタルサイン測定で得られる多くの情報を基準値に照らし合わせて判断、変化を捉えるという高度なレベルの達成目標である。学生はバイタルサイン測定で得た情報をつなぎ合わせていくことに通常多くの時間を要する。その点を加味し、要点の教授、学習のヒントを示し、事後の振り返りをさせることで目標の達成に向かうと考える。小目標ごとにみると、「問4.基本的な幼児のバイタルサイン測定方法を述べることができる」は全学生が高く評価していた。これは、自己学習やグループワークといったブリーフィングによって実施されており、学生個人や学生同士の主体性が活かされた目標達成であり、臨地実習において今回設定した事例とは異なる発達段階や疾患の児を受け持った場合にも、同様のプロセスを踏ませることが学習の助けとなると考える。しかし、「問1.喘息児の病態生理、治療(作用と副作用)を述べることができる」や「問14.治療が指示通り、安全に行われているか、確認することができる」といった全体的に自己評価の低い項目については、病態生理や治療に理解について10%を超える学生ができなかったと評価した。本学の小児看護学の講義では、喘息児のペーパーペイシェントにて看護過程の展開をしているが、3年次以降の臨地実習の期間はさまざまな領域での臨地実習をしており、小児看護学臨地実習に対する準備が十分でなく、学内実習時間で行う80分のブリーフィングのみでは十分に病態や治療の理解ができなかったと考える。学内実習は2日間で実施していたため、限られた時間の中でどこまで目標到達させるかを教員が吟味し、場合によっては必要な知識を提供し、目標達成に向けたアプローチ方法を修正していく必要がある。あるいは、引き続く臨地実習において目標達成に向けた学習支援を継続的に行っていく必要があると考える。6.2学内実習前後の小児看護学臨地実習前自己効力感という観点からみたシミュレーション教育の効果シミュレーション教育のねらいは主体的な学習者を育てる点にある。今回は主体的な学習の前提条件となる自己効力感の変化からシミュレーション教育の効果を捉えようとした。全体としては、シミュレーション教育が学生の小児看護学臨地実習に対する自己効力感を高めることが明らかになり、この結果より主体的学習をねらいとするシミュレーション教育が効果的であったといえる。小児看護学実習においては、先に述べたように学生は「小児看護学実習へのイメージのギャップ」「子どもとの体験の少なさへの戸惑い」「関係作りへの不安」といった困難感を感じている6)。その中で、シミュレーション教育によって、上記の困難感を少しでも払拭し、小児看護学臨地実習を「なんとかやっていけそうだ」と前向きな状態で臨地実習を迎えられることは学生にとって非常に効果的な学習であったと考える。しかし、学内実習前から自己効力感が高い学生(高得点群)では、学内実習後に自己効力感が低下するという、全体とは異なる傾向が示された。因子でみると、「因子C.対象の理解と援助」という因子で低下をしている。また、学内実習後に自己効力感の低下を示したものの、もともとの自己効力感の低い学生(低得点群)の学内実習後のそれと比べると有意に自己効力感が高いという結果が示された。小児看護学臨地実習後の自由記述においても「子どもとのコミュニケーション」「バイタルサイン測定の順序・方法」「安全対策」「グループダイナミクス」「観察項目の抽出」「バイタルサインの測定方法」「子どもの状態のアセスメント」「子どもの気持ちの理解」といった学びが示された。つまり、もともとの学習意欲も高く、基本的知識はあるものの、より臨床に近い形での学習を体験することで、対象の理解の難しさを実感した結果、自己効力感―7―学生を主体とした小児看護学臨地実習前のシミュレーション教育効果の検討表5フルスキルシミュレーション教育に関する自由記載

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