中部大学教育研究14
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2目的本研究の目的は、小児看護学臨地実習を履修する3~4年生を対象として臨地実習前に学習者主体のシミュレーション教育を導入し、その効果を1)学内実習目標達成の自己評価(シミュレーション教育における形成的評価)および、2)小児看護学臨地実習に対する課題特異的な自己効力感の変化の2つの側面において検討することである。これらの評価に基づいて、シミュレーション教育の効果や問題点を検討し、学生のニーズに即したシミュレーションプログラムを作成することを目標とした。3研究方法3.1対象本学科の3~4年生で、平成25年度秋学期から平成26年度春学期に小児看護学臨地実習を履修する学生を対象とした。3.2調査期間調査期間は平成25年11月~平成26年7月とした。3.3シミュレーション教育の概要小児看護学臨地実習は3週間にわたり、1週目に2日間の保育園実習を行い、その後本シミュレーション演習を含む学内実習を2日間実施、翌週から2週間、病院での臨地実習を展開する。シミュレーション教育には、小児患者シミュレータ“Simjunior”を使用し、臨地実習に臨んでいる看護学生という状況設定のもとで、「気管支喘息発作で入院した幼児のフィジカルアセスメントを安全安楽に留意して実施することができる」ことを学習者主体として学習することをねらいとし、5つの大目標を設定した。3.4調査内容とデータ分析方法1)学内実習目標達成の自己評価学内実習終了後(学内実習2日目)に、各学生に学内実習目標1~5の小目標ごとの到達状況(計18項目)について、「1.できなかった」「2.あまりできなかった」「3.ややできた」「4.できた」の4段階リッカートスケールでの回答を求めた。分析は、4・3の回答を高く自己評価した学生、2・1を低く自己評価した学生とし、それぞれが全体に占める割合(度数分布)を算出した。2)小児看護学臨地実習自己効力感本学の小児看護学臨地実習自己効力感(以下、自己効力感とする)を測定するものとして、自作の質問紙を用いた。質問紙は、園田ら7)の臨地実習前演習(本研究でいう学内実習を指す)の自己効力感尺度(対象理解、他者との関係性の構築、基礎知識の理解の必要性、看護過程の理解の4因子)と、眞鍋ら8)の臨地実習自己効力感尺度(対象の理解・援助効力感、友人との関係性持続効力感、指導者との関係性持続効力感の3因子)を参考に作成し、因子A.基礎知識の理解(2項目)、因子B.コミュニケーション技術(2項目)、因子C.対象の理解と援助(9項目)、因子D.友人との関係性の維持(3項目)、因子E.学習者間の関係性の構築(2項目)、因子F.学習者‐教員間の関係性の構築(4項目)、因子G.学習意欲(1項目)ならびに「臨地実習で何とかやれそうだ」という総評1項目の計24項目で構成した。各項目に対して、「1.できないと思う」「2.あまりできないと思う」「3.ややできると思う」「4.できると思う」の4段階リッカートスケールで測定した。得点が高いほど自己効力感が高いことを示している。臨地実習に向けたレディネスとは、講義による知識と演習による小児看護技術の統合のみならず、実習に対する心理的適応も指し、臨地実習に対する心理的適応を促すには、「自分にはこれだけのことができる。」という主観的な判断を高めていくことが重要であるといえる。つまり、学生の臨地実習に対する自己効力感の向上が重要である。自己効力感とは、「自分が行為の主体であると確信していること、自分の行為について自分がきちんと統制しているという信念、自分が外部からの要請にきちんと対応しているという確信」であり9)、つまり、行為に対して「自分はできる、やれている」といった感情を表している。臨地実習における自己効力感(臨地実習でもやっていけそうだという感覚)は、承認・所属・安全といった前向きな情緒の安定という学習環境のもとで促進され、自己効力感は主体的な学習(自己実現)に向かうとされている10)。自己効力感には二つの水準があり、一つは、課題や場面に特異的に行動に影響を及ぼす自己効力感で、もう一つは、具体的な個々の課題や状況に依存せずに、より長期的に、より一般化した日常場面における行動に影響する自己効力感である11)。本研究では、小児看護学臨地実習に臨む学生という特定の課題における自己効力感を評価することを目的としている。分析は、自己効力感尺度の総得点および因子ごとの合計得点の平均値について、学内実習前と学内実習後での比較分析(対応するt検定)を行った。また、学内実習前の総得点より標準偏差を基準として高得点群と低得点群に分け、学内実習後の得点に変化があるかを、それぞれ比較分析(対応するt検定)を行った。さらに高得点群と低得点群の2群間について、学内実習後の得点における比較分析(独立したt検定)を行っ―2―大村政生・山田知子・石井真・清水いづみ・畑中めぐみ・山田恵子

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