中部大学教育研究13
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4まとめと今後の課題アンケートの結果から、今年度のスタートアップセミナーでは、本学及び学科の掲げる初年次教育のねらいを概ね達成できたと考えてよいだろう。それはまた、先に挙げた初年次教育の目的の一部分(たとえば大学という場の理解、スタディスキル)を達成したともいえる。この結果には、初年次教育の基本軸を示し質を保証する全学共通テキストと、学科の特性を踏まえた具体的な活動の内容、ねらい、方法を明示する<スタートアップセミナー教員マニュアル>の2冊が大きな役割を果たした。このことは、グループ間で意識に差がみられた設問が全体の2割程度にとどまったことにも表れている。複数の教員が統一シラバスのもとに一つの目標に向かうとき、共通テキストや教員マニュアルは不可欠であるといえるだろう。また、アンケートからは、各活動に対する改善点も明らかになった。例えば、「社会貢献活動」では、4年間継続できるプランの計画の指導の充実とフォロー体制の確立、「私400」では、ライフプラン・キャリアプランとしての活動を主とした上で、作文に対する基礎的な指導を加えられるような時間の調整、「ディベート」では、本活動に含まれる各々の学びのスキルについての基礎的な力に対する指導の充実、「学習指導要領学習会」では、ねらいに沿った学習範囲と勉強会の効率的なあり方の検討などである。来年度は、シラバス及び<教員マニュアル>にこれらの改善を加え、4つの活動を継続したい。また、今回目的として掲げていなかった「大学の中で人間関係を構築すること」や「クリティカルティンキングなど大学で学ぶための思考方法を身に付けること」(河合塾、2010)も、児童教育学科1年生に身に付けさせたい資質である。そのため、本学に設置されているSA・TA制度というピアサポート制度を活用することも含めて、今後さらに充実した初年次教育の方法と成果を目指していきたい。謝辞スタートアップセミナーは、授業担当教員を中心に児童教育学科専任教員全員が協力・連携して進められています。また、アンケート調査では児童教育学科1年生及び授業担当教員10名の協力を得ました。記して感謝いたします。引用・参考文献中部大学全学共通教育部初年次教育科(2013)大学で学ぶナカニシヤ出版濱名篤・川嶋太達夫(編著)(2006)初年次教育歴史・理論・実践と世界の動向丸善株式会社河合塾(2010)初年次教育でなぜ学生が成長するのか-全国大学調査からみえてきたこと東信堂国立教育政策研究所(2009)大学における初年次教育に関する調査LeeUpcraft,M.,Gardner,J.N.,&O.Barefoot,B.(2007)ChallengingandSapportingtheFirst-YearStudentMaruzen&Wiley.山田礼子(訳)初年次教育ハンドブック学生を「成功」に導くために丸善山田礼子(2012)学士課程教育の質保証へむけて学生調査と初年次教育からみえてきたもの東信堂吉田直子・古市真智子・味岡ゆい・長尾寛子(2013)「スタートアップセミナー」を学生はどう受け止めたか-2012年度の児童教育学科の試み-中部大学教育研究12号pp.59-66准教授現代教育学部児童教育学科古市真智子教授現代教育学部児童教育学科吉田直子助教現代教育学部児童教育学科味岡ゆい准教授現代教育学部児童教育学科長尾寛子―78―古市真智子・吉田直子・味岡ゆい・長尾寛子

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