中部大学教育研究13
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0.05)(図24)。この結果は、本対策勉強会への継続的参加に伴い、ピアサポートによる自主勉強会を学生主体で実施できる可能性を示唆するものである。3.5視聴覚教材を用いた自習と学科教員による講義の違い本研究では、視聴覚教材を用いた自習と学科教員による講義の長所と短所について、32人の記述回答を得ることができた。似たような記述は著者達の判断によりまとめた(表1、2)。教員による講義と視聴覚教材を用いた講義にはそれぞれ長所と短所があり、一概にどちらが良いのかの判断はできない。しかし、例えば、説明が分かりやすい、という利点に対して、分かりにくい、という欠点が存在したり(表1)、視聴覚教材では教えてくれない解き方を教えてくれる、という利点に対して、分かりやすい解き方などを教えてほしい、という欠点が存在したりするなど(表2)、矛盾が一部生じていることが判明した。このことは、個々の学習レベルにかなりの差があり、全ての参加者が本勉強会の効果を最大限受けることは難しいことを示唆している。このことからも、本対策勉強会が開催されて良かったかどうか(図21)、次学期も勉強会に参加したいか否か(図22)に対する回答に、「全く思わない」、「あまり思わない」という回答を選択した学生がいることを説明できるのかもしれない。また、視聴覚教材のみを用いた学生主体の自習グループ19人から、自習の長所と短所についての記述回答を得ることができた。似たような記述は著者達の判断によりまとめた(表3)。欠点もあるが、利点も数多く存在し、ピアサポートによる自主勉強会を学生主体で実施できる可能性があることを読み取ることができ得る。教員がいないとまとまりがなくなる、集中力の持続が難しいなどという問題をどのように解決していくかが課題と言える。3.6公務員試験対策勉強会において大学教育の重要性を認識させるために著者達は、大学におけるこのような公務員試験対策の提供を必ずしも良いとは思っていないし、大学教員が行う仕事では必ずしもないと考えている。なぜなら、大学は、公務員養成のための予備校や専門学校ではなく、学術研究および教育の最高機関であるからである。大阪商業大学では、経済系科目を中心に、正課授業と課外講座において、公務員志望者が公務員試験の学習を通じて、大学教育の重要性を認識できるカリキュラムになっている(佐々木2006)。大学の正課授業で公務員試験対策を実施することには懐疑的であるが、正課の授業につなげる取り組みは、積極的に真似すべきである。ただし、公務員試験の教養問題をスポーツ・医療・健康系の授業に活かすための具体案は練られていない。―64―堀田典生・伊藤守弘図23今の自分の学力では公務員試験に合格できないことを知った図24もう1日程度みんなで集まって教え合い・学び合いの機会がほしい02040608010012345(%)20132012P=0.081.2. 3. 4. 5. 02040608010012345(%)20132012P=0.051.2. 3. 4. 5. 表1視聴覚教材の長所と短所良い点悪い点一つ一つの説明が丁寧である。教える人がプロなので説明が分かりやすい。先生が教えてくれるような感じで分かる。根本的な考え、やり方がわかる。簡単な解き方を教えてくれる。説明を繰り返し視聴することができる。家でも予習復習ができる。先生不在時もパソコンがあれば講義が受けられる。自分たちでできる。分かりにくい。説明が下手。もっと分かりやすい教え方があるはず。違う解法の説明がない。スピードが早い。一回しか解法を聞けない。機械的で嫌だ。一方的なので質問はできない。少し集中力が落ちる。勉強の流れが悪い。時間が長い。勉強の進展度に差が出ると、待たされる人が出てくる。担当教員がいないため私語をし出す者がでてくる。聞き逃したらそのまま流れてしまう。個別で教えてくれない。自分の意見を言えない。ヒントをもらえないので解けないことがよくある。表2学科教員による講義の長所と短所良い点悪い点視聴覚教材では教えてくれない早く解く方法を教えてくれる。質問できる。個別で教えてくれる。細かくこちら側の反応を見るところがよい。解説が分かりやすい。見直しの時間をくれる。時間を区切れるのでメモがしやすい。分かるまで教えてくれる。重要なところは何度も言ってくれる。緊張感がでる。解説の際に一緒に解きながら教えてくれるので、わかりやすい。解けないと先生から何か言われるので自分で解いて自分はできるとアピールするのが楽しみである。復習は家でやればいいので講義ではもっと新しい問題を扱ってほしい。もう少し分かりやすい解き方などがあれば教えてほしい。字をもう少し濃くしてほしい。解けないと文句を言われる。問題が難しい。問題が多く、一つ一つに長い時間解説できない。問題が少ない。少し丁寧にやりすぎだと思う。解答時間が長い。会議でいなくなることが多いが、その分問題がほしい。時々分かりにくいところがある。解答が何通りもあると思うのですが、その中で一番わかりやすく理解しやすい解答を教えてほしい。表3自習の長所と短所良い点悪い点教え合いや質問のし合いができる。良い雰囲気でやれる。自分たちでやらないといけないと思える。お互いの将来の目標にむけ頑張ろうと思える。互いに競争しあえる。教え合いの中で双方がレベルアップできる。周りの人間に影響されて高めあえる。切磋琢磨できる。集中力の持続が難しい。みんなが分からないことがあるとき聞けない。教え合いが雑談へと発展する。まとまりがたまになくなる。私語が多くなることがある。少しふざけてしまう。

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