中部大学教育研究13
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1はじめに中部大学生命健康科学部は、医師・歯科医師以外の医療従事者(コメディカル)の国家資格取得に力を入れている学部である。学部内の6学科にて、看護師、保健師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、臨床工学技士、救急救命士の国家資格取得を目指すことができる。その内、スポーツ保健医療学科にて養成を行う救急救命士は特殊であり、各地方自治体の消防職員(地方公務員)にならないと、その資格を活かすことができない。なぜなら、救急救命士法に従えば、救急救命士としての業務の投薬や気管挿管は、救急救命士の資格を持つ消防職員が、各地方自治体管轄の救急車に乗車前あるいは、乗車中でしか実施できないからである。従って、大学におけるキャリア指導は、学部内でも他学科とは大きく異なる。すなわち、スポーツ保健医療学科以外の学生が医療従事者を目指す多くの場合、国家試験合格に最終目的が置かれるが、スポーツ保健医療学科の救急救命士志望の学生の場合、卒業直前に実施される国家試験合格に加え、卒業年度の春から夏にかけて実施される地方公務員採用試験(消防)の合格も必要となる。公務員採用試験の教養問題の特徴として、正解が分かりにくい知識問題や、参考書では教えられない試験直前の時事問題、あるいは、頭が痛くなるような数学・パズル問題が出題される。加えて、それを短時間で解くことが求められており、その対策(受験勉強)が急務となっている。なぜなら、高校までの学習内容が充分に身についていない学生が少なくないからである。スポーツ保健医療学科では、公務員試験対策勉強会を正課外にて、1年時の春学期より、週1回の頻度で講義と自習を交えた形式にて実施している。しかしながら、その勉強会が公務員を志望する学生にどのような影響を及ぼしているのか、また勉強会のあり方は学生が期待するそれと一致しているのかなどは不明である。そこで本研究では、それらの点を明らかにすることを目的とした。2調査方法2.1調査対象とアンケートスポーツ保健医療学科公務員試験対策勉強会に参加している学生に対して、勉強会の最終回にアンケートを実施した。その中でも本研究では、2012年春学期、2012年秋学期、2013年春学期に実施したものを対象にした。アンケートは、今後の本勉強会の改善のために参考にする旨と、研究で利用することがあることを断った上で、記名式にて実施した。各質問項目に対して、「全く思わない」から「とても思う」までの5件法で回答を求めた。2.2スポーツ保健医療学科公務員試験対策勉強会スポーツ保健医療学科の公務員試験対策勉強会は、学期期間中、1回90分にて週1回の頻度で課外活動として実施した。毎回出席を条件に開催し、公務員を目指すか否かの迷いのある学生の参加は基本的には認めなかった。一つの教室を用いて開催してきたが、参加人数の増加に伴い、平成25年度より、教室を二つにした。視聴覚教材を用いた学生主体の自習グループと、学科の教員1名の講義と視聴覚教材を利用した自習を併用する1年生だけのグループの二つに分けた。後者のグループの視聴覚教材を利用した自習は、担当の教員不在の際に活用した。学科教員の講義では、問題を解くことと、解答の解説を行った。問題は前回の類似問題を利用したり、以前解いた問題を再度解かせたりするなどして、解き方の定着に結びつくように工夫した。また、1問あたりにかけられる時間を強く意識させ、同じ問題を二回続けて解けないことがないようにすることの徹底を図った。さらに、視聴覚教材を利用した自習と講義がつながるようにした。自習で用いた視聴覚教材は学科教員の講義と同様に、問題を解くこととその解説が主たる内容であった。ただし、通常の勉強会と同じように1つの教室に集まり実施した。3結果・考察3.1公務員試験対策勉強会が正課の授業態度に及ぼす影響アンケートには、3学年のべ81名の勉強会参加者が―61―中部大学教育研究№13(2013)61-65正課外で実施する公務員試験対策勉強会から得られる効果と課題堀田典生・伊藤守弘

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