中部大学教育研究13
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不思議に思った。エタノールを入れて、DNAを出した瞬間がすごく楽しかった(女子)。・機会があるなら、もっとすごい実験をしてみたいです。正直言って、こっちの進路にも進みたくなりました(女子)。・この高校は、中部大学と同じ学園ということでこうやって大学の授業が受けることができるので、本当にラッキーだと思いました(男子)。・湯煎の匂いはとても臭かったが、DNAが出てきたときはすごく感動した(女子)。・ろ過液にエタノールを入れたら一瞬で糸状のDNAが出てきたのでびっくりした。この糸状にDNAが詰まっているのは考えられないし、簡単にDNAを取り出すことができるのはすごいと思った(女子)。・とてもおもしろい実験でした。実験はすごく真剣にするものだと思っていたけど、皆で楽しくできて良い体験でした(女子)。・意外と簡単な方法でDNAが抽出できたので、日常生活でもまだ分かっていないことが簡単な方法で分かるかもしれないと思った(男子)。・DNAの抽出実験と聞いて、複雑で難しいだろうと思っていたが、やってみると簡単に取り出せることを知って楽しかった(男子)。・今までに勉強した内容と今回の実験が結びついたのでとても勉強になったし、実際に体験できたので、今までよりも興味がわいてきた(男子)。・こんなに実験を楽しめたのは初めてでした(男子)。また、「DNA抽出実験以外でどんな実験に興味あるか?」の質問に対して以下のような記述があった。・解剖(カエル、魚、動物)・髪の毛の観察・マウスを使用した病気に関する実験・血液型を調べる・細胞分裂の観察5考察今回、生徒の関心を強く引きつけられる内容との判断から、DNAの抽出を採用した。今回のアンケート結果より、実験を体験する事により、高校生の進路選択に対する大きな動機づけとなっている。今回の実験は、大学から高校に向けての実施であったため、高校生を対象として、大学の教育資源を活用して行う高校の教育活動となった。しかしながら、出張模擬実験の価値は、単なる大学レベルの実験の体験ではなく、もっと鳥瞰的な意味で、知的刺激の享受を求める必要があると考える。そのためには、実施方法や題材の選択を高校側と綿密に打合せる必要があると感じた。勝野によると、高大連携は「高校と大学が、それぞれの教育資源を活用しつつ、連携教育して行う教育活動の総体」であると記述している。今回の出張模擬実験は、高校に出張して行うもので、大学外での取組みにあたる。高大連携の形式には、大きく分けて2種類がある。それは、「大学内」と「大学外」での取り組みである。今回の実験は「大学外」であり、1回限りの単発開催で、大学での学問研究の一端に触れる機会ではあるが、定着やその後の高校における教育効果を考えると、問題点が多い。しかしながら、これが現在最も普及している高大連携の実施形態であると勝野が報告している。平成4年にピークに達した18歳人口は、その後減少し続けている。昭和30年代前半まで10%程度だった高等教育機関への進学率は、現在専門学校等を含めると約80%にまで上昇し、高等教育はユニバーサル化に突入している。そのような状況下においても、大学数あるいは学部数が増加しており、学力に疑問を抱かせるような入学者の増加が問題視されている。しかし、併設校との良好な関係を築き、同じ学園内で高校と大学が話し合いを基に企画する「大学体験」を通し、中部大学への入学者を増加させる策は良案であると考えている。さらに、高大連携による「大学体験」の教育効果として、併設校生徒の大学の学びへの高い関心、高い目的意識や入学までにさらなる学びと言った、中部大学の各学部・学科にマッチングした状態で入学できると考える。また、これらの意識が入学後のエンジンとなり、(併設校以外から入学した)周囲にもプラスの影響を与え、さらには中退抑制にもつながると考える。今回の出張模擬実験は単発のイベントとなったが、中部大学第一高校の一貫コース生に対し、科目等履修生制度を活用して、高大連携講座を展開している。今後、高校と大学双方の努力により、高次の「教育接続」を目指すシステム作りが必要ではないだろうか。高大連携を単なる機会の提供に留めず、教育内容・方法を含めた併設校間高大接続のシステム作りが、高校側にとっても、大学側にとっても、切実な課題として迫ってきていると考える。そして、構築されるシステムが、他大学に類を見ないものとなるような工夫をすべきであると考える。最後に、同じ学校法人中部大学の教育機関が、同じ建学の精神を持って一貫性のある教育を実現することは当然あってしかるべきであると考える。しかも、これは単に理想的な姿では無く、構築し得る十分に実現可能な教育システムであると、今回の出張模擬実験及び科目等履修生制度を活用した高大連携講座を通して感じた。―53―併設高校への出張模擬実験(生物分野)報告と考察

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