中部大学教育研究13
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3.3コンピュータ応用工学本授業では有限要素法(FEM)の概要を理解させるために、グループ単位でSOLIDWORKSを用いて統合的に実習させており、加えて、材料力学による評価との違いを理解させている。受講生は3年の機械科の学生約100名であり、既に、応用工学を学習していることから、毎回、積極的に取り組んでいる。図4は、橋のデフォルメに対して様々な機械的特性を解析した内容である。図4コンピュータ応用工学のレポ-トの例(橋をテーマとして振動・剛性・流体などの複合解析を実施)3.4数学の考え方文系の学生に限らず、多くの学生は、卒業後に数学がどのように実社会で役立つのかを、大学に入る前も、入学後も理解していない。実社会では、数学の問題を解くことの能力よりは、数学的思考が重要であり、その大切さを理解させることは非常に重要である。なぜなら社会的な能率は、全て、数学的思考によって決まっているからである。しかし、それらは、必ずしも数式としての数学に帰結するだけでは意味がない。図5は、文系の学生が相談して、パンケーキの焼き方の公式を見いだしてレポートにした例であるが、本授業では、このような能力をつけさせることが主題である。この授業経験を通じて、数学的思考の大切さを理解してもらえる。4実践した内容の概要4.1双方向授業とそのねらい以上、3節では本論文で対象としている授業内容の概要を示したが、4節では、本論文のねらいである双方向授業の実践に関して述べる。双方向授業とは、本大学教育研究センターが推進している主旨でもあり、石鍋が目指している授業でもある。図5数学の考え方のレポート(パンケーキの焼き方)しかし、教員が所定の内容を教えて、それを習得するという基本パターンを授業と思う教員からは、双方向授業は、異議を唱えられる表現だとも危惧される。そのため、授業の本来の目的を再度確認したい。大学の期間が、学生らが社会に出て活躍するための時間と捉えることが大切である。従来行われている、各学生が個別に教科書の内容を理解し、それを習得し、一定の試験に合格することで十分であるかが、重要な論点となる。特に、インターネットが普及し、情報が簡単に得られる時代になったことから、暗記よりも主体的思考力が重要になってきている。さらには、コンピュータを駆使できる力が益々重要になってきている。加えて、実社会ではチームで学習し、相談して課題に取り組む8)ことが重要になっている。図6には、双方向授業として意識している枠組みを記載した。本プログラムでは、特に、理解度が低く落ちこぼれていきそうな学生を、毎回の授業で確認し、授業中に、理解度を高めていくことを重視し、そのためにCumoc1)を利用した。教員の中には、学生を特定しないCumocの意義に疑問を呈する方もおられる。確かに、卒研生と先生のような関係ではその必要はない。しかし、学科を越えた授業をしている立場の先生の場合、理解できていると判断して、授業を進めるのは危険であり、理解できない内容をレポートに記載させるように指導して提出させても、具体的な記載をする学生は、石鍋の担当する範囲で2割程度に限られる。本論文で設定した目標値は高く、90%以上の学生に、受講の満足度を高くするには、それでは不十分なのである。また、今の学生には、タイムリーな指導が必要である。―35―e-learningを用いた双方向授業の実践報告

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