中部大学教育研究13
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1まえがき中部大学では様々な授業改善ツールが大学教育研究センターで準備されている。例えば、Webや携帯電話を用いて「学生による授業評価」を行い、結果をWebで公開している。加えて、同センターは授業改善を目的としたFD活動を推進し、その効果が確認されている1)-2)。また、双方向授業を支援する本学クリッカーシステムCumoc(ChubuUniversityMobileClicker)3)を学内に展開している。さらに、総合情報センターではe-learingの利用1)5)を推進している。一方、本学では授業改善年間計画(プログラム)を実施しており、各教員は年度開始時にその計画案を提示し、その内容にそった授業改善を実施して、結果を学長に報告している。筆者の石鍋は、このプログラムとして、本論文の内容を計画した。かねてより、石鍋はCumocを利用した授業改善を実施しており、これらを利用する効果を実感してきた。さらに、今回e-learingを利用して更なる授業改善を目指した。この実施に当って、かねてより利用してきた、この両センターのCumocおよびe-learningシステムを用いて、さらに効果を出すべく自分なりの検討を実施したので、その結果を報告する。2目標設定前述した「学生による授業の評価」には8種類の項目があるが、その中の特定の評価値に対して、目標値を設定して、この授業改善の目的を達成することとした。具体的には、担当する4科目週6コマの授業のすべてに対して、上記、学生による評価値を4.5(最大5.0)」にすることを目標に掲げた。ここで、評価値は様々あるが「受講生がこの授業を受けて良かった」と回答する率で評価した。評価値が4.5とは90%以上が受講してよかったと回答することに対応する。その設定値を用いた理由を次に述べる。杉井らのFD報告書2)では、授業効果を、その理解度とすることの意義を述べている。しかし、本論文で述べる共通科目の場合、学科を超えた授業であるため、学生の専門が異なることや、近年、CADなどへの関心が下がるなどの危惧が予測されていることから、上記の設定を掲げて、授業主旨への満足度を評価としている。さらには、本報告では、授業効果の細かい内容理解度を高めることが授業の中心課題でないことを述べたい。即ち、受講した学生に、授業を受けて良かったかどうか、その一点がとても大切なことであることを指摘したい。この点に集中して、授業効果を分析した。特に、なかなか受講意欲が高まらない学生への意欲改善につなげるための、「双方向授業の実践」の結果を述べることとする。本プログラムで、目的を概ね達する授業効果を確認できたが、当初予想していなかった課題の認識も得られたので、その概要を報告する。以下に指摘する内容を正しく御理解いただくために、3節ではまず、4科目の授業の特徴を記載する。3実施した授業の概要と特徴4科目のうち、3つの科目は工学部のコンピュータ支援関係の授業である。この3つの科目の授業を週5コマ実施している。石鍋は企業経験があり、製品設計を目的としたCAD及びCAE(コンピュータ支援工学)の専門家・研究者であり、工学部の2年~4年生にこの分野を教えている。受講する学生の多くは、この分野の重要性と内容を習得し、卒業後に仕事として関係する。受講した学生は、これらの内容を体験的・学問的に理解した実感を持つが、このような学生を100%にすることが本検討の目的でもある。残り一つは、全学共通課目の授業である「数学の考え方」である。文系の学生が70%であり、多くの学生は「数学」が社会でどのように役立つかを理解することで授業を受けたことを評価してくれている。この効果をより高めることが今回の論文検討の目的でもある。これら全ての授業は、講義用教室でなく、CAD室および総合情報センターの教室を利用している。その理由は、この4科目全ての授業では、CADやCAEの作業に必要なパソコン利用を前提としている為であるが、加えて、授業と関係する内容を、自主的にインターネットで調べさせることを可能にするためである。―33―中部大学教育研究№13(2013)33-38e-learningを用いた双方向授業の実践報告-Cumoc及びBlackboardを積極的に利用した授業-石鍋雅夫・杉井俊夫・岡崎明彦

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