中部大学教育研究13
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1はじめに永年、コンピュータ・プログラミング言語を教えている。前任校では、アセンブリ言語を10年ほど、中部大学経営情報学部に赴任して、BASICを数年間、その後、C言語を数年間教え、工学部情報工学科に配置換えになってからも、C言語を10年余教えている。この科目は、それまで全く身についてない能力(プログラムを作る能力)をつけるという点が他の科目と違う。プログラミング、すなわち、プログラムを作るとは、いろいろな命令の中から、必要な命令を選び、それらを組み合わせて目的の働きをするものを作ることである。試行錯誤して、適切な組み合わせを見出すことが主になる。この作業が嫌で脱落する学生もいる。いろいろ試行錯誤、苦労して、プログラムを作り、それが動くと感動する。しかし、そこまで行かない学生もいる。そこまで行くまでは多少の努力が必要である。授業では、プログラミングができるようになる過程を、プールで水泳ができるようになる訓練・練習にたとえて話す。泳ぐことができるようになるためには、とにかくバタバタ手足を動かし、何とか少しでも泳げるようにもがく必要がある。そのとき,水を飲んだり、鼻から水が入ってきたり,苦痛をともなうかもしれない。それでも、少し耐え、続けているうちに少し泳げるようになる。しかし、プールの水の中に入らず、プールの脇で、上手に泳ぐ人を熱心に観察しても、それだけでは決して泳げるようにはならない。やはり少しの努力が必要である。水泳に限らず、初めて自転車に乗って走行できるようになる場合の過程も同様であると話す。プログラミングの能力は、試行錯誤しているうちに、何とか身につくようになる。楽しく、試行錯誤できればよいが、少し、努力が必要かもしれない。以下に、コンピュータ・プログラミングの教育内容、プログラムを作るときに行う試行錯誤の過程、定期試験の予備試験としての模擬試験、実習課題提出時に行う質問の例、そして、私の担当のコンピュータ・プログラミングの科目(コンピュータ・プログラミングあるいはC言語基礎)の不合格率を述べる。2教育内容コンピュータ・プログラミングの基礎を教える。具体的な科目名は「C言語基礎」である。座学の授業が1コマ、実習の授業が1コマの週2回の授業である。後続の科目として、「C言語応用」があり、同様な授業形態である。この科目「C言語基礎」は、今まで、一度もプログラムというものを作ったことのない学生に、簡単なプログラムならば作ることができる能力を身につけてもらうことが目的である。教える内容は、必要であるものの中でも、特に必要なものに限定すべきであると思っている。知っていた方がよいと思われるものについては思い切ってカットするのがよい。教科書も自作のものを使い、そこに書いてあることは100パーセントできるようにする。とにかく、教科書に書いてあることを完全に使いこなせるようにする。市販の教科書には、重要なこと、余り重要でないこと、ほとんど重要でないことが混在している。学生に、最低限必要なものだけを教えることも必要ではないかと思っている。この科目は、情報工学科で身につけるべき最も大切な科目である。情報工学科の専門科目の中には、このプログラミング能力を前提にした科目も多くあり、プログラミング能力が身についていないと、それらの専門科目の単位は取得できないことになる。受講生には、この科目を習得できない学生は、情報工学科を卒業したとはみなされないし、この科目の単位を取得できない学生は100%退学していると言って刺激を与えることもある(過激なことを言っていると思われるかもしれないが、この科目は必修科目であるので、当然のことを言っているに過ぎない)。勿論、刺激を与えるだけでなく、水泳や自転車の話をして、勇気付けることと激励することも忘れない。3試行錯誤の過程授業の実習で、与えられた課題のプログラムを作るとき、よくできる友達に相談して、プログラム作成のヒントを教えてもらうのはよいが、答え、あるいは、答えに近いものを教えてもらっていては、なかなかプログラムを自分で作れるようにはならない。自分の頭で試行錯誤して、適切なプログラムを探す手順をとらないとプログラムを作る能力は獲得できない。プログラムはコピーが簡単であることが特徴である。実習課題は、他人の作ったプログラムを写して提出することもできる。自分でプログラムを作らなければ意味がな―27―中部大学教育研究№13(2013)27-31コンピュータ・プログラミングの教育について吉田年雄

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