中部大学教育研究13
31/148

1生活環境論の講義担当の経緯中部大学は、2010年に理学療法学科(定員40名)と作業療法学科(定員40名)を生命健康科学部内に開設した。その前身は2003年に別地にて専門学校として設置された理学療法学科(3年制)である。工学部と同一キャンパスに設置されることから工学部教員に理学・作業療法学科の講義担当の協力依頼があった。当該学科の専門科目として「生活環境論」(1単位)と「住環境整備入門」(1単位)が必修で開講される。前者は屋外の生活空間におけるユニバーサルデザインの必要性について土木系学科の教員(筆者)が講義し、後者は高齢者・障害者等のための福祉住環境整備について建築系学科の教員が講義することとなった。2生活環境論の講義概要「生活環境論」の講義名称は学科設置申請時に既に決められていたが、講義内容は科目担当者である筆者が検討することとなった。それまでは、筆者の所属する都市建設工学科の専門科目において、福祉のまちづくりに関する内容を講義することは年に1回程度だけであり、正課ではない講演、講座において実施してきただけであった。今回は7回分(1回は90分)の内容を用意しなければならない。また、受講者は工学系ではないこと、必修科目であること、理学・作業両学科の合同であることなどの条件を満たさなければならない。他大学の講義内容の調査や教科書として活用できるものも探した。結果として、筆者が適当と思うものは見当たらず、自らの経験に基づき、構成することとした。その内容を表1に示す。なお、当初は7回を予定していたが試験の時間を講義に振り替え、8回実施した。次章ではその内容(2012年度のもの)を解説する。筆者の元々の専門は交通計画であり、様々な交通現象が研究対象である。交通は人々の活動達成のために派生的に実施されるものである。よって、交通をする人(交通主体)の特性、交通を実現するための乗り物や道具(交通具)の特徴、移動・交通空間(交通路)の整備手法の間の多様な関係を把握して、社会的あるいは個人的な問題に対する解決策を検討してきた。福祉の観点からの交通問題についても筆者が所属する土木学会での主要課題として取り上げられ、学会活動と社会活動注)を続けてきた1)2)。さらに、「日本福祉のまちづくり学会」が全国的な福祉のまちづくり活動の連携と学術研究を目的として、専門分野の横断組織として1997年に設立された。筆者は設立準備段階からメンバーであり、現在は理事兼東海北陸支部長である。また、中部国際空港(セントレア)の旅客ターミナルビルの設計・施工に関しては、ユニバーサルデザインの観点からの検討・助言を多様な障害当事者の人々とともに遂行してきた3)。以上のような知識と経験に基づいて、本講義に対応することとした。3各週の講義内容3.1福祉のまちづくりの考え方講義の導入部であると同時に福祉のまちづくりの意義について説明する。講義内容とその資料として、以下のものを準備した。1)福祉のまちづくりの理念、目的と目標、達成方法(資料1-1澤村誠志:リハビリテーション医療と福祉のまちづくり)【出典】福祉のまちづくり研究、13-2、pp.2-72)福祉のまちづくりの歴史(資料1-2障害者、高齢者のまちづくり対策年表)【出典】福祉のまちづくり研究、13-2、p.9、野村歡:建築分野からみた福祉のまちづくり3)考慮すべき対象者、障害者分類(資料1-3「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」(日本語版)の厚生労働省ホームページ掲載について)【出典】厚生労働省ホームページ4)都市のユニバーサルデザイン(資料1-4都市のユニバーサルデザインの考え方と既存ストックを活用した都市のバリアフリー化)【出典】磯部友彦:バリアフリーの社会空間づくり、科学研究費補助金研究成果報告書、成熟社会における社会資本整備の方向性と制度改革(代表竹内伝史・岐阜大学)、pp.21-24、2009―21―中部大学教育研究№13(2013)21-25理学療法学科・作業療法学科専門科目「生活環境論」の実践報告-医療系学科における「福祉のまちづくり教育」-磯部友彦

元のページ  ../index.html#31

このブックを見る