中部大学教育研究13
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意味において、学生参画型FD(学生FD活動)として行われている法政大学社会学部の受験生向け広報活動や学生授業アシスタント、あるいは大阪大学の新入生ガイダンスやイベント「キャリア・ケーススタディ」は明らかに学生の主体的な活動だけでは成立し得ず、教職員側からの方針に沿って行われるピア・サポート・プログラムだと言って差し支えないであろう。しかしながら立命館大学のピア・サポート・プログラムには、学生FDスタッフの活動と見間違う特色も見られる。ESを始め立命館大学のすべてのピア・サポート・プログラムには3点の特色があるとされ、一点目は支援する対象へのサービスの充実であり、二点目はピア・サポーター自身の学びの深化と成長、三点目は業務を通じての教育改善への貢献が挙げられている。この三点目の特色は、業務であり、教職員の指導助言が必須という条件を除けば学生参画型FD(学生FD活動)に近い活動であると言える。すなわち仲間に対する各種支援活動を通して、所属する担当部署の(教職員の)活動や業務、授業に対して学生視線からの改善策を提言することは、紛れもなくFDやSD活動であろうし、学生FD活動と称することに違和感はない。しかし、現実的にはこれは一点目の支援する対象へのサービスの充実に付随する副次的な効果であり、ピア・サポート・プログラムの特色全体のほんの一部分に過ぎない。2.5「学生参画型FD(学生FD活動)」の事例の分類前節までの用語の検証を受けて、再度木野の『大学を変える、学生が変える』に含まれる事例について、他の用語と言い換えが可能かどうかを検討する。つまり他の用語の概念で説明した方がより適切な活動は、学生参画型FD(学生FD活動)の範疇から外すことによって、学生FDスタッフの定義を明確にすることを試みるわけである。なお、学生関与、学生従事については、表1のすべての活動についてその概念に包摂されていることはすでに見たとおりである。したがってここではアクティブ・ラーニングとピア・サポート・プログラムについて検証をすすめる。本著書には7つの大学の事例が含まれているが、それぞれ固有の名称を持ち、その活動内容も千差万別である。しかしその多くが、これまでの議論で見た学生関与、学生従事の思想に裏付けられたアクティブ・ラーニングの事例と、その一形態でありかつもっとも高度な学習プロセスである、仲間に対する支援を行うピア・サポート・プログラムに分類されることが分かる(表4)。より積極的に言えば、学生参画型FD(学生FD活動)に含まれる活動の多くは、FD活動の文脈で語られるものではなく、たとえそれが結果的に「教育」と「学習」のパラダイム・シフトを促進したり、大学教育を改善・改革することにつながったとしても、アクティブ・ラーニングもしくはピア・サポート・プログラムの範疇に入れるべきものではなかろうか。なぜならば、自主講座や双方向授業への学生の参画は、紛れもなく学生が能動的学習を行っているのであり、決して教員の授業を改善するためのFD活動に従事しているのではないからである。また同様に学生が他の学生や受験生を支援するのは、あくまでも自らと仲間の学びを促進するためであり、決して授業を改革するた―14―沖裕貴GSITISA図1ピア・サポーターの位置づけ

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