中部大学教育研究13
19/148

2.2アクティブ・ラーニングとの比較アクティブ・ラーニングの定義は、学士課程答申の用語解説から述べると「伝統的な教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学習者の能動的な学習への参加を取り入れた教授・学習法の総称」とされる。そもそもの日本語訳は「能動的学習」であり、そのなかには広く発見学習、問題解決学習、経験学習、調査学習などが含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワークなどを行うことでも取り入れられると言われ、かなり曖昧な表現で説明されている。三浦(2010)は、国内外において明快な定義が存在しないアクティブ・ラーニングについて、学生や生徒の学習を活発にするための教授戦略が多岐に渡り、学習のスタイルに関する理論も多数あり、そして実践のスタイルも多種多様であるという状況を踏まえると、この用語の説明はこれらを包括する一般的・普遍的な表現をとらざるを得ないと述べ、実践者自身が個々に自らの授業の実態、あるいは実践したい授業のあり方に沿うようにアクティブ・ラーニングを定義するしかないと結論づけている8)。ちなみに三浦自身の定義は「アクティブ・ラーニングとは、授業者からの一方的な知識の伝達によって引き起こされる受動的な学習に対峙する状態あるいは行為である。それが学習者の能動的な学習を教育目標として取り込んだ授業形態や、そのような授業を実現するための教授法・授業デザインなどの戦略・方略を意味するものとして用いられることもある。具体的には、例えば他の学生との対話や協同作業、あるいは個々の省察を経るなど、知識を獲得するための知的プロセスを体験することによって、自らの経験と実生活とに関連性の深い知識を創造し、構築するための営みのことである」と、やはり包括的な表現を選択している。同様に溝上(2007)は、アクティブ・ラーニング導入の実践的課題を検討するために、データベースCiNII(国立情報学研究所)に所蔵されるアクティブ・ラーニングの実践を収集しようとしたが、アクティブ・ラーニングの定義が包括的であるため一括検索が難しく、「論文タイトル」のなかに「大学」「教育」、あるいは「大学」「授業」もしくは「大学」「カリキュラム」の見られる論文を第一次抽出したうえで、そのタイトル内容や本文内容に目を通して判断せざるを得なかったと述べている。溝上が最終的に抽出した実践は講義型授業におけるものと演習型授業におけるものとに分けられたが、その学習プロセスと学習の質を高める工夫(表2、表3)は多岐に渡っている9)。表2講義型授業におけるアクティブ・ラーニングで検討されていること(溝上、2007)表3演習型授業におけるアクティブ・ラーニングで検討されていること(溝上、2007)このようにアクティブ・ラーニングの定義は包括的で一般的であり、用いられる学習プロセスや学習の質を高める工夫は多岐に渡るが、その学習成果に関してはほぼ共通に認識されている。それを端的に表すのが、アメリカのナショナル・トレーニング・ラボラトリーが示す「学習ピラミッド」で、アクティブ・ラーニングと呼ばれる「グループ・ディスカッション」や「実践・実習」「学生同士の教え合い」においてそれぞれ―11―「学生参画型FD(学生FD活動)」の概念整理について章・節(著者)活動内容の概要第十章愛知教育大学の「愛教大CoNandE委員会」:大学教育・教員養成開発センターFD部門の公認組織①学生FDサミットへの参加②「あいこね」ロゴ作成③「学生の声を聴くFDとは」主催④愛知教育大学広報冊子「CampusNow!」寄稿⑤学長との昼食懇談会参加⑥「学生FDひろば」参加⑦活動報告冊子制作⑧春サミット用ガイダンス用ムービー制作⑨新入生、高校生ガイダンス参加⑩「授業改善ワークショップ」主催⑪新任教員FD参加⑫大学教育学会RT参加⑬しゃべり場「CampusTalk」の共催学習プロセス学習の質を高める工夫他者の視点強化授業外サポートカリキュラム・サポートコメント・質問を書かせる/リフレクション/ディベート/レスポンス・アナライザーで理解度を示す/身近な現象を観察させる教員のコメントがフィードバックされる/他の学生のコメントや質問を見られるようにするオンライン上でリフレクションを可視化・蓄積/自学自習型e-learningシステム病院実習・アーリー・エクスポージャ(医学)/分解実習(工学)学習プロセス学習の質を高める工夫高次の学習法他者の視点強化授業外サポートカリキュラム・サポート情報収集/インタビュー・質問紙調査・実験/製作/野外観察/グループ・ディスカッション/グループ学習/プレゼンテーション/教員・他の学生との質疑応答問題発見・発想法/思考の整理法/要約の仕方/論・ストーリー構成の方法/ジグソー法(教育学)授業外での学生同士の議論を可能にすべく、電子掲示板、ブログなどの電子メディア・システムを導入/伝える相手を意識したシミュレーション電子掲示板、ブログなどの電子メディア・システムを導入/学習支援センター組織(工学)/図書館、自習室、実験室などの24時間開放初年次科目と高学年PBLとの接続(歯学)/他の専門科目と連携したカリキュラム再編成(理科教育)

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る