中部大学教育研究12
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重要なものである」というイメージをもち、それが「自校の教育・研究の特徴や長所への理解」や「愛校心の向上」や「学習意欲ややる気の向上」につながっていくと考えられるのである。さらに、自校についてマス・メディアが報じた映像を見ることは、学生にとって大学への帰属感・アイデンティティを形成し、高める上でも効果があると考えられる。Anderson(1983)は、国民を「イメージとして心に描かれた想像の政治的共同体」であると定義し、近代国家の成立に果たした印刷メディアの役割について論じている。Andersonのいう「国民国家におけるナショナリズム」と、「大学における愛校心、帰属感」を相似形のものと仮定するならば、放送された映像を多くの学生が視聴することによって、大学内で「想像の共同体」をつくることが可能になるのではないだろうか。これらの仮説をもとに、最後に提言をまとめたい。5まとめ現代の大学において、学生たちの大学への帰属感を高め、大学のアイデンティティを確認・共有する上では、テレビに出演する教員たちは大きな役割を果たすと考えられる。このことをふまえ、今後、全国の大学では、何らかの形で、自校についてのニュース映像・テレビ番組映像の収集・保存に積極的に取り組むべきである。多くの大学で、これまで教員の論文や著書などについては、大学図書館などで収集・保存がなされてきた。しかし、教員が出演したニュース映像やテレビ番組などが大学として組織的・体系的に収集・保存されてきたとは言い難い。これらの映像を組織的・体系的に収集・保存するとともに、学生たちがこれらを自由に視聴できるようにし、教員が授業などで活用できるようになれば、「自校教育」に大いに役立つと考えられる。以上のような「自校教育」における映像の積極的な活用を、21世紀の大学の新たな役割として提言したい。謝辞本研究は中部大学、平成23・24年度特別研究費Aの一環として行ったものである。引用文献Anderson,B.(1983)ImaginedCommunities:ReflectionsontheOriginandSpreadofNationalism:RevisedEdition,VersoBooks:London.=白石さや,白石隆訳(1997)『増補想像の共同体-ナショナリズムの起源と流行』NTT出版.Boorstin,D.(1962)TheImage;or,WhatHappenedtotheAmericanDream,Atheneum:NY,後藤和彦・星野郁美訳(1964)『幻影(イメジ)の時代-マスコミが製造する事実』,東京創元社.小川明子(2009)「ローカルの不思議」,水越伸,東京大学情報学環メルプロジェクト編(2009)『メディアリテラシー・ワークショップ情報社会を学ぶ・遊ぶ・表現する』東京大学出版会,pp.60-71.大川一毅(2011)「大学における自校教育の導入実施と大学評価への活用に関する研究」平成20~22年度科学研究費補助金基盤研究(C)研究成果報告書.寺﨑昌男(2009)「自校教育-それはなぜ重要か」,『大学時報』2009年9月号,第58巻328号pp.30-35,日本私立大学連盟.(准教授全学共通教育部統括調整部門)―80―近藤尚

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